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「かながわの本」6冊紹介 PartⅡ

  • 2020年2月28日 神奈川新聞掲載

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 こんにちは! イマカナ編集担当です。先週に引き続き「かながわの本」を紹介します。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、県内でもイベントの中止や延期が相次いでいます。不要不急な外出はせず、神奈川新聞に掲載した本で楽しんでください。

私的で鮮やかな街の記憶



横濱異文化記憶帳

 異国情緒とは横浜のありきたりな枕ことばだが、そう思わせる表現は案外難しい。鮮やかな発色と明暗差が印象的なこの写真集は、その情緒をとどめられた一冊といえるだろう。

 数十年の間に撮影された新旧の作品には、本牧地区の米軍住宅、材木が積まれた“現役時代”の赤レンガ倉庫、本牧の数々のレストランや新山下の「タイクーン」など、かつての街も記録されている。

 その視線はあくまで主観的で私的だ。写真集にしては大きくないA5判で、見開きに18枚の写真を詰め込み、ステンドグラス、古い照明、家具、暖炉など洋館の細部の写真を並べていくことで、建物全体の雰囲気を表現する。著者と一緒に散策するような手法だ。

 序文は横浜に住む作家の山崎洋子が手掛けた。今の横浜にもうエキゾチシズムはない、と思っていたのに、本作を見て「『見えていなかった』だけ」だと気付いた、と賛辞を贈る。

 著者は横浜市中区在住。写真とデザインの工房「LIGHTHOUSE」代表を務める。

(町田 昌弘 著、日本カメラ社、電話03(3639)3681、2200円)

日米同盟の拠点を知る



キャンプ座間と相模総合補給廠

 軍都相模原は戦後、占領した米軍の拠点となった。現在まで「無期限使用」されている在日米陸軍キャンプ座間、相模総合補給廠(しょう)である。表紙写真に、その広大さを改めて感じる。

 本書は、戦後にわたって「同盟」の重要拠点であり続けた両施設の歴史的・現在的意義を、冷戦などの国際情勢と、それに伴う米国の対日政策の変遷の中で捉えた類例のない好著だ。地元書店らしい試みである。

 冷戦構造が固まりつつあった初期の逸話で興味深いのは、メーデーが暴動化することを想定し、武力鎮圧を準備していたことだ。生物、化学、放射能兵器の訓練も行われていたという。

 朝鮮戦争中に黒人兵士が相模原、座間で多くの犯罪を起こした事情を分析したくだりには考えさせられた。公民権法以前、軍隊内にもあった差別構造が「社会的弱者のさらなる弱者(被占領者)への抑圧の移譲」をもたらしたのだ。

 著者は沖縄東アジア研究センター主任研究員、立教大講師などを務め、相模原や座間などの市史編集も手掛けた。

(栗田 尚弥 著、有隣堂、電話045(825)5563、1100円)

温かな筆致の探鳥記



とり・トリのおはなし

 県内で探鳥活動を続ける著者が、鳥たちとの触れ合いを温かな筆致でつづった。生態の解説は自身の観察眼に基づく。「人間の近くに居て人を頼ってはいますが、信用はせず、用心をしながら、それでも人と一緒に生きているのがスズメたちです」とは絶妙だ。

 著者の好奇心もうかがえる。タカの仲間のツミが庭先で小鳥を捕食する場面に遭遇し、驚きつつも小一時間観察。保護したメジロを懸命に看護し「大喜びで肩に止ま」るほど慣れながらも「庭に呼びに来た仲間のメジロの群の所に帰って行きました」との一節には、寂しさと安堵(あんど)が交錯する。

 まなざしが優しい。秋に中国大陸から渡ってくるツグミの項で「海に飛び出すのには勇気が要ります。小さな身体が集まり、大きな塊になり飛び出します」。南へ渡るツバメには「来年も待っていますよ」。

 句誌「阿夫利嶺(ね)」の連載をまとめた。分類、体長などの情報や写真も収録。体重を「里芋一個」「金柑(きんかん)一個」などと表現するのが面白い。著者は相模原市南区に住む。

(藤井 とり 著、阿夫利嶺俳句会、電話042(743)2467、自費出版(受注印刷)のため価格は応相談)

好奇心と嫌悪のはざま



コロンビア商人がみた維新後の日本

 南米コロンビア人が日本について執筆した初の旅行記が130年を経て初邦訳された。訳者は横浜銀行頭取、コンコルディア・フィナンシャルグループ社長を歴任した元大蔵官僚だから驚く。在コロンビア特命全権大使の経験もある。

 著者は中国人労働者を手配する商人として幾度も東洋へ渡った。訳者も指摘する通り、当時の日中を比較する記述が多く、その点でも重要な記録である。

 生活文化の「気品、趣味と繊細さ、思いやり(略)美的な素質」を高く評価する一方で、それが真の芸術ではないとも指摘する。日本女性の精神性の高さを褒め、しかし愛人や奴隷のように扱われる現状に憤慨する。維新体制を指して「制度を模倣し、習慣を真似(まね)る」だけでは不十分だと説く。現代にまで通ずるこの国の課題を喝破している。

 裸で入る銭湯の不道徳を嘆き「足から、そして、下から上に体の各部を拭き、最後に顔と鼻の先まできれいにする、というか、正確に言えば、不潔にする」と記す。嫌悪とともに好奇心がにじむ。

(ニコラス・タンコ・アルメロ 著 寺澤 辰麿 訳、中央公論新社、電話03(5299)1730、2640円)

違い磨き合う居場所を



応答する<生>のために

 グローバル社会を生き抜くスキルアップ全盛時代だが、本書はそうした「生きる力」論に潜む、相手を説き伏せ、世間を動かしたいと願う「支配の欲望」をあぶり出す。そしてラグビーワールドカップ(W杯)の選手たちのように、汗をかき、球をつなぐ心身のぶつかり合いや、自分の殻を超え出た「ゆるやかな関係」に身を委ねようと説く。

 著者は横浜国立大学名誉教授で、県教育委員を務める教育人間学の第一人者。

 巻末の人名索引が興味深い。ゲーテ、ニーチェ、ベルクソン、宮沢賢治、河合隼雄、丸山圭三郎など、デカルト、カント、サルトルら「理性の哲学」によって周縁に追いやられた「生の哲学」に連なる一群の思想家、芸術家らが並ぶ。

 横浜ホームレス殺傷事件などをきっかけに抜本的に立て直された「ふれあい教育」運動スタートから約40年。相模原障害者施設殺傷事件を経て、著者が再び読み解く内容は「他力本願」や「愛の救い」といわれてきた事柄と共鳴する。違いを磨き合える居場所の根拠を探りたい。

(高橋 勝 著、東信堂、電話03(3818)5521、1980円)

戦争責任と向かい合う



世界に平和を 小さな自分史

 なんと素直な書名だろう。語り口も優しく、そして易しい。当時の言葉や歴史的用語は若い人に分かるよう説明している。

 著者は1938年佐世保生まれ、幼少期を逗子で過ごした。安保闘争の時代には大学生。ミッションスクールに通った姉の影響で洗礼を受けクリスチャンに。明治学院学院長だった95年、敗戦50年にあたり礼拝で学校の戦争責任・戦後責任を「告白」したことで知られる。

 地域全体で戦争に協力した息苦しさや違和感、研究者として家族と滞在したソ連での暮らし。文字通りの「自分史」だが、中心は、信仰と平和の問題。戦争責任と向かい合うのは先人を責めるためでなく、自分たちが同じ過ちを犯さないため。反響を呼んだ「告白」について、自分の心の内(自己の罪)を神の前に言いあらわすことだが「近頃は恋愛感情を相手に打ち明けることしか思い出さないらしい。ちょっと驚きました」とユーモアも忘れない。

 巻末に「明治学院の戦争責任・戦後責任の告白」を収録。

(中山 弘正 著、自費出版。問い合わせは「日本キリスト教書販売」の黒木さん電話03(3260)5670、1000円)


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