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　平安時代末期に現在の鎌倉、藤沢周辺を治めていた大庭一族。源平の争乱が起きると、４人の兄弟は源氏方、平氏方に分かれて争った。その史実を題材に、中世の欧州をほうふつとさせる世界で権力者たちの争いを描くファンタジー戦記。

　都から離れた東国を治めるベオ家の４兄弟。戦場で傷を負い、弟に家督を譲った長男はレッディア家との覇権争いに敗れたホワイティア家の御曹司、三の君に近づく。だが、当主の弟はそれを危険視。兄弟は一族の存亡を懸けて、敵味方に分かれることになる。

　郷土の歴史を換骨奪胎した点がユニーク。舞台は西洋だが、「アマノイワト」「スモウ」といった“和物”も登場。さらにトロイア戦争の元凶となった女神ヘレネや、洗礼者ヨハネの首を所望したサロメの物語などのエッセンスがちりばめられており、作者の遊び心がのぞく。

　幅広い年齢層に読んでほしい、と平易な文章でつづられている。著者は大磯町在住のフリージャーナリスト。今回が初の小説執筆となる。

　森川天喜（あき）／著、幻冬舎、１３２０円。