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【かながわの本/茶聖】茶の湯で戦国に抗する
- 2020年3月22日 神奈川新聞掲載

戦国時代の政治は二畳の茶室で繰り広げられた。茶の湯で武将を魅了し、フィクサーともいわれた千利休の目で、豊臣秀吉の天下統一の裏面史を描く。
武力で天下人を目指す秀吉に利休が仕えたのは、茶の湯の力で武人の心を静め、世を静謐(せいひつ)に導こうとしたからだった。秀吉の九州平定後、利休は公家や武士、それに庶民も招き「大茶湯」を開くよう進言する。「民を茶の湯に執心させることができれば、下剋上(げこくじょう)など考える者はいなくなります」と説得する言葉に利休の狙いが表れている。
だが、利休の願いはむなしく秀吉は変わらない。前半、利休が秀吉の「侘(わび)」を見せつけられる場面は白眉である。秀吉は天皇を接待する禁中茶会に、黄金の茶室をしつらえたのだ。わびさびとはかけ離れた、下卑た趣向のようでいて、その美しさに利休は言葉を失う。「己の」、独自の美を追求する意味が示される。
2017年12月から18年11月まで11カ月間、329回にわたり本紙に連載された。著者は横浜市生まれ、在住。
伊東 潤/著、幻冬舎、2090円
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