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【かながわの本/三浦半島の医療史】病院に残る軍港の記憶
- 2020年5月3日 神奈川新聞掲載

医療史といっても技術や設備の話ではない。個別の病院を挙げ、その成り立ちや変遷をまとめた地域史で、何とも斬新な視点だ。横須賀軍港を擁する要塞(ようさい)地帯だった三浦半島の歴史を、新たな切り口で描いた。
冒頭は芥川龍之介の「蜜柑(みかん)」。横須賀から東京へ奉公に出る少女を主人公にした短編を引き合いに、自身がかつて診察した女性が、海軍将校の家に奉公した思い出をよく語ったと回想する。鎌倉の寺院が大正期に精神障害者の静養所を開いた事実には驚かされた。
海軍下士官や家族のための病院を前身とする横須賀市の聖ヨゼフ病院、海軍病院として設立された同市の国立病院機構久里浜医療センターなど、やはり海軍に由来する施設が多い。
売春防止法が戦後に制定される前から性病を専門とし、女性の更生相談も行った横浜市磯子区の県立屛風ケ浦(びょうぶがうら)病院は、大都市の裏面史を象徴している。
著者は国立病院機構埼玉病院の精神科部長。横須賀市立うわまち病院や川崎市の関東労災病院の勤務経験もある。
金川 英雄/著、青弓社、2640円
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