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気になる コロボックルと歩んだ軌跡 神奈川近代文学館、佐藤さとる展(上)

  • 2021年8月23日 神奈川新聞掲載

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村上勉画「だれも知らない小さな国」文庫版表紙原画(2010年 講談社) 個人蔵
村上勉画「だれも知らない小さな国」文庫版表紙原画(2010年 講談社) 個人蔵

 佐藤さとる(1928~2017年)は、10歳まで横須賀市の按針塚に近い逸見町(現・西逸見町)で生まれ育った。

 「それにしても、夏休みはいそがしい。せみもとらなくてはいけないし、かぶとむしも、かみきりむしも、とんぼもとらなければならない。(中略)こういうことは、どうしても夏休み中にしておかなくてはいけないような気持ちがあるのだ」

 横須賀での日々を題材とした「わんぱく天国」のこの一節からは、豊かな自然の中で、友だちと生き生きと遊び回った少年時代の躍動感が伝わってくる。

 佐藤は一方で、国内外の童話を1人静かに読みふける時間を大切にしていた。そしてそれらの主人公たちが「心の中でしだいに凝縮して小さくなって」、周囲の自然の中で動きだすような情景を空想するようになる。こうした体験から小人に強い思いを寄せるようになり、その姿を自身の手で表現しようと考える。


佐藤さとる 按針塚で(1968年)
佐藤さとる 按針塚で(1968年)

 1944年、旧制中学時代にスケッチに描いたのが小人「クリ・クル」の絵。夏目漱石の俳句「菫(すみれ)程な小さき人に生れたし」に触発され、漱石が英国留学をしていたことから西洋風の装いの妖精となった。

 そして敗戦直後から小人を登場させた童話の創作に着手。先のスケッチと同じ、スミレ色の髪、みどり色の服、紋白蝶(もんしろちょう)の羽で作った長靴、手袋、ルビーが付いた三角帽子を身につけた「クリ・クル」が小鬼と対決するストーリーを、物語の中で語られる〈もう一つの物語〉に据えた。


村上勉画「星からおちた小さな人」挿絵原画 個人蔵
村上勉画「星からおちた小さな人」挿絵原画 個人蔵

 このモチーフを何度も書き改めていくうちに、少年時代に横須賀で空想していたような、現実の世界に小人が登場する物語を描きたいと考えるようになる。日本の風土に自然に溶け込む小人を探すうちに、「だれも知らない小さな国」(59年)の主人公・身長3センチほどの小人「コロボックル」を生み出した。

 「コロボックル」が初めて登場するのは、按針塚周辺を思わせる小山の麓に湧く泉のほとり。「決定的といえるほどの強さで、心の中心部を占め」るという佐藤の生誕の地は、こうして「コロボックル物語」の舞台となった。(神奈川近代文学館展示課・半田 典子)

【関連記事】コロボックルと歩んだ軌跡 神奈川近代文学館、佐藤さとる展(下)

 企画展「佐藤さとる展─『コロボックル物語』とともに─」は9月26日まで、神奈川近代文学館(横浜市中区)で開催中。事前予約制で一般500円ほか。祝日を除く月曜休館。問い合わせは同館、電話045(622)6666。


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