気になる 多様性を認め合う世界を子どもたちに 相模原市在住の現代美術家が創作絵本

相模原市在住の現代美術家、黒岩まゆさん(37)が創作絵本「うちゅうひゃっかてん」(小学館、1650円)を、このほど出版した。宇宙人が一堂に会する人気百貨店が舞台。独創的でユーモアのあるイラストと、思わず吹き出してしまうシュールなストーリーは、独自の世界に引き込む不思議な魅力を持つ。「宇宙人の姿を通して多様性を認め合う世界を子どもたちに伝えたかった」と、作者の思いが詰まっている。
不気味な筆跡の題字と怪しげな色合いの絵が描かれた表紙を開くと「あらゆる星の商品と、最高のおもてなしを提供する、泣く子も笑う宇宙百貨店。どうぞごゆっくりお楽しみくださいませ-」と始まる。宇宙一の品ぞろえを誇る老舗百貨店の社長は、社長室からモニターで店内を監視中。そんな中、1組の仏頂面の親子を発見する。何をしても笑わない2人。「もっと笑顔になるおもてなしをしろ!」と、社長の指令に、店員たちはあの手この手で母子を楽しませようと奮闘。最後は思いもよらない結末が待っている。

藤野を中心に活躍するアーティストらが集まる「ふじのアートヴィレッジ」(同市緑区)にアトリエ兼ギャラリーを構える黒岩さんが初めて手掛けた作品だ。黒岩さんは専門学校でデザインを学び、卒業後はイラストレーターとして活躍。イラスト以外の表現手段を模索する中、30代から現代美術の世界に飛び込み、「人間賛歌」をテーマに、独特な色彩と多国籍で不思議な世界観を平面や立体、インスタレーションなどさまざまな手法で表現してきた。2年前、町田で開催した個展を訪れた編集者から声を掛けられたことがきっかけで、実現した。

宇宙人を題材にした物語はすぐに思い付いたという。「虫や石を集めたり、空想や妄想するのが好きな少し変わった子どもでした」と振り返る。「絵本は子どもから大人までみんなに愛されるもの。自分が感じたようにわくわくしながらページを開いて、何度も読み返したくなるような作品をいつか作ってみたいと思っていた」
絵本に登場するキャラクターは美術作品同様、どこか陰があって怪しく不気味だが、人を引き付ける魅力がある。「幼児向けの明るく、愛らしい作品にしたくなかった。自分らしいダークな色彩の世界を楽しくて美しいと感じてほしかった」と力を込める。文字はもちろん、星くずといった背景の細かい部分までアクリル絵の具と面相筆を使って丁寧に描き込んだ。
「描いている時が一番楽しい。宇宙人が行く百貨店を想像するだけでわくわくする。絵は自由に描けて没頭できるし、絵本になることでたくさんの人に届けられる」とほほ笑む。次回作をすでに構想中。「宇宙船の顔出しパネルも作ったので、コロナが収束したら原画展で全国を巡回したい」と思いは尽きない。
2021年10月7日公開 | 2021年10月5日紙面掲載
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