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フランク永井◆夜霧の第二国道

  • 2021年7月18日 神奈川新聞掲載

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作詞/宮川哲夫・作曲/吉田正
作詞/宮川哲夫・作曲/吉田正

道の始まりに思いはせる

 「いずれ第二のマヒナをつくる予定もあるからな。そのつもりでがんばれよ」。こんな言葉を投げ掛けられたのは、マヒナスターズのメンバー、日高利昭先生によるカラオケ教室での初日のことでした。まさかそれから半年とたたずして第二どころか第一、正規のメンバーに納まっちゃっていようとは! そこには複雑な人間模様が交差しており、それゆえの穴埋め突貫工事だったわけですが…

 転じて今回は戦後の目まぐるしい道路事情を踏まえた“第二”の謎をひもときながら、フランク永井さんの「夜霧の第二国道」(1957年・昭和32年)に筆を転がしたいと思います。ペーパードライバーの自分に果たしてナビできるのか、ハンドルを震わせつつ、無事神奈川県に辿(たど)り着けますよう…。

 「国道1号なのに、なぜ“第二京浜”なのか」。都心を走りながら目に入る歩道橋などの表記に、ふとこの疑問が生じた方も少なくないのではないでしょうか。歴史をひもといていくと、もともと江戸時代の旧東海道に沿って造られた国道1号は、現在は違う番号が振り当てられているのですが、それは後述。


横浜市鶴見区の響橋付近(1962年、いずれも神奈川新聞社撮影)
横浜市鶴見区の響橋付近(1962年、いずれも神奈川新聞社撮影)

 この旧国道1号に大正時代から自動車が出現、それによって初めて自動車道路を意識して東京から横浜の道幅を拡張、30(同5)年に「京浜国道」として完成しました。それでも増え続ける自動車にさらなる対応策として36(同11)年には並走するように「新京浜国道」が着工されます。当時としては画期的に幅広く、世界有数の規格を誇る道路となりました。

 戦争の混乱を経て、戦後急激な経済復興が始まるといよいよ本格的に国民の自動車普及率もそれに比例し、52(同27)年に施行された「新道路法」によって、より多くの交通量を誇る先の「新京浜国道」すなわち「第二京浜」の方が国道1号に制定され、本来の国道1号であった「第一京浜」がなんと国道としては15号にまで格下げ。いや、別に格の問題ではないと思うのですが、しくじった落語家さんでもないのに何となくかわいそう…。


響橋の夜景(1974年)
響橋の夜景(1974年)

 というわけでややこしいのですが、この逆転現象は歩行者から自動車へと重心が移ってゆく、ひいては日本が近代化してゆくその象徴であり痕跡といえるのかもしれません。しかし夜霧にむせぶ男にとっての第二国道は、恋の戦いに負けたゆえの“第二”の重い十字架か。バックミラーの面影を振り捨てに、ハマの汐鳴(しおな)りを耳朶(じだ)にそよがせるのです…。


絵/タブレット純
絵/タブレット純

 こうして物語をくゆらせることができるのは道路の歴史を知ってからのこと。ただ低音パートの欠員に偶然居合わせ借り出された当時の僕は、一も二もなく喉仏にひたすら魔法を念じるばかりでした。…と、ここで僕の鼻腔(びくう)にも追憶の風が。ぼくが通った「マヒナカナリヤスクール」は戸越銀座駅近くの幹線道路沿いにありました。くしくもその辺りが第二京浜のスタート地点。五反田から「第五の男」として末端に納まり始まった道の果てには、こんなハマの匂いを吸った紙面の海があろうとは、泉下の日高先生に感謝、感謝。(泣)


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