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推し タブレット純のかながわ昭和歌謡波止場(10)
オフコース◆秋の気配

  • 2021年10月10日 神奈川新聞掲載

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作詞・作曲/小田和正
作詞・作曲/小田和正

心に染みる切ない恋の場面

 全ての中で、一番好きな歌は? たまに質問されるのですが、ぼくは「ちいさい秋見つけた」と答えるようにしています。正直、好きな歌はありすぎて決められないのですが、例えば酒飲みのぼくが「好きなお酒は?」と聞かれて「酒場の雰囲気が好き」と答えるようなもの。…ん? ちょっと違うかな。ただ広い意味で、その世界が持つ空気として、全てに“秋の気配”を感じるものが生来好きな気がします。ほんのり心にぴりっと染みる薬味みたいなものかな。

 思春期まで同じ部屋で過ごした、上の兄のラジカセからはよくオフコースが流れていたのですが、その世界観、ドラマにどこか“主役になれない人たち”を感じていたような気がします。この世のほんの片隅での、忘れ去られた出来事。でも、ふとした瞬間に、ぐしゃりと漏れる嗚咽(おえつ)。スーパーグループに対して失礼なのですが、オフコースはそんな風に“薬味感”溢(あふ)れる、予感と余韻のはざまの妖精、ぼくの中でそんな心象風景が浮かびます。

 グループそのものも暗い下積み時代、“長い予感”の果てに、浮上のきっかけとなったのが“秋”だったのもオフコースらしい気が。あ、その前にデュオ時代の「眠れぬ夜」(1975年・昭和50年)、これもどこか符号的ですが、そんな夜々を経て、ぬれ落葉の奥にしっかり息づく火種は「秋の気配」(77年・同52年)によって一陣ののろしをあげるスマッシュヒットとなりました。

 この曲の舞台が横浜、それも「港が見える丘公園」と推察されていることは、実はこのたび初めて知ったこと。あのロマンチックなデートスポット、歌が放つ切ないスクリーンと裏腹に、作者の小田和正さんは実にドライに自作を切り刻んでいます。「“嘘(うそ)でもいいからほほえむふりをして”ってそんな都合いい話ないわけでさ」「“ぼくのせいいっぱいの優しさをあなたは受けとめる筈(はず)もない”って悪いのは自分だって認めてる。こんな男のどこがいいんだ」等々。これは小田さんのある種の“照れ”からの発言のように思えるのですが、結論として「傲慢(ごうまん)な気持ちを横浜の風の中に隠した」と。…う~ん、やっぱり薬味だ。


港の見える丘公園から新山下、本牧ふ頭を臨む。横浜ベイブリッジ開通はこの14年後(1975年、神奈川新聞社撮影)
港の見える丘公園から新山下、本牧ふ頭を臨む。横浜ベイブリッジ開通はこの14年後(1975年、神奈川新聞社撮影)

 先ほどから失礼なこと書いてるなと思いながら、アクやクセ、言い換えれば人間の業みたいなものをそっと然(さ)り気無(げな)く何層もの優しさで隠す世界がオフコースな気が。そこにはバンド所帯となったとて“two and three”でなくあくまで五人、五等分でやっていこう、とした小田さんの新メンバーへのおとこ気、気遣いも、コーラスにミルクのように溶け込んでいます。


絵/タブレット純
絵/タブレット純

 しかし、オフコースの核はやはり小田さんと鈴木康博さんのお二人。その出会いは小学生の時、別々の小学校で偶々同乗していた電車で、トンネルに入ると警笛を鳴らすというイタズラをしていた小田さんに鈴木さんも便乗したことが始まりなのだとか。イタズラでもいいから、二人が突然世の中に警笛を鳴らすように、世のJ-POPをやんわりジャックしてくれたなら…。鈴木さんはこのように語られています。「昔の恋人にちょっと会ってみたい、それも旅の下でフッと会うのなら」ファンはきっと“オフコース(もちろん)”とずっと心でうなずいたまま、固く信じていることでしょう。



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