気になる 横浜がモデルの短編アニメ「ハーバーテイル」 完成10年、記念プロジェクト進行中

横浜をモデルにした港町「Y」で、主人公のレンガくんが冒険を繰り広げる短編アニメ作品「ハーバーテイル」の完成・公開から10年を記念したプロジェクトが進行している。伊藤有壱監督は「横浜に拠点を構え、作品に着手したのは2006年。町が大きく変化を遂げた今、この作品を総括しつつ、新しい1歩を踏み出す契機にできれば」とプロジェクトに込めた思いを語る。
ハーバーテイルは、人形のこま撮りに、現実や空想の風景をデジタル技術で組み合わせる「ネオクラフトアニメーション」技法を用いて5年余りの歳月をかけて完成したオリジナル作品だ。11年に公開されると、光と闇が共存する独自の世界観や、町の息づかいを感じる新しい視覚体験が大きな話題に。日本を含めて24カ国で上映され、12年にはチェコのズリーンフィルムフェスティバル・アニメーション部門で最優秀賞と観客賞の2冠を獲得するなど国際的にも評価を受けた。
同作品は横浜のクリエーターたちをも魅了。シリーズ作品として、写真家の森日出夫の写真を使った3編のショートアニメ「YOKOHAMA TALE」(11年)、俳優の五大路子が登場する「Blue Eyes ─ in HARBOR TALE ─」(14年)も制作された。
10周年プロジェクトの核となっているのは、DVD付き書籍「ハーバーテイルのすべて(仮)」の発行で、30日まで出版のためのクラウドファンディングを行っている。「構想から完成までのデータや思いを詰め込んだ」と伊藤監督。「作品が世界を旅した記録も含めた密度の高い内容をお届けします」

12月3~12日に横浜赤レンガ倉庫1号館(横浜市中区)で展覧会を開催。4日には五大がゲストとして登場する。10~16日にはシネマ・ジャック&ベティ(同)で伊藤監督のミニトーク付きの上映会も予定されている。「どちらも、生まれたばかりの作品を上映してくれた大切な場所。横浜という町から生まれた作品が、町に帰ってきたという循環をありがたくかみしめています」
多くの企業・団体のコマーシャル映像などを手掛ける伊藤監督にとって、スポンサーのつかない同作は作家としての表現を追求した特別なもの。「作家としての自分を掘り下げることもできたし、支持をいただけたことが糧になりました」
「面白い作品が見たい」という思いから、東京芸術大学大学院映像研究科では教授として後進の育成に取り組む。今年話題となったアニメ作品「PUI PUI モルカー」は同大学院出身の見里朝希監督の作品だ。「横浜は、若き表現者たちが次々に生まれるクリエーティブな場所。自分も1人の表現者であるという原点に立ち返り、ハーバーテイルの世界で、また新しい作品を作りたいと思っています」
2021年11月4日公開 | 2021年11月3日神奈川新聞掲載
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