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文化部探検隊 文化部員の体験記です。
絵画修復プロジェクト 画家の思いを次代に継承

絵画の保存修復に取り組むNPO法人美術保存修復センター横浜(横浜市中区)が、寄付金を活用し、県内の公共施設などが所蔵する絵画などの美術品を修復する「時を超えて伝える─絵画修復プロジェクト」を立ち上げた。修復を通じて画家が作品に込めた思いや、次代への継承を目指している。
同センターでは、個人などから募った寄付金で絵画修復する取り組みを広く周知することで、少しでも日本の文化意識の向上につながればと新プロジェクトを開始した。第1弾として8月から、真鶴町立中川一政美術館(同町真鶴)の油彩画の修復に取りかかった。戦後の日本洋画壇をリードした画家、中川一政(1893~1991年)はダイナミックな画風が特徴。なかでも厚塗りで描いたバラの油彩画が有名だ。49年から同町にアトリエを構え、真鶴半島の西側に位置する福浦港(湯河原町福浦)や箱根の大自然を描いた風景画を数多く残している。

今年は中川の没後30年の節目であり、秋に大規模な特別展を予定している同美術館が選ばれた。対象作品は、アトリエから歩いて通った福浦の防波堤から集落などを眺めて描いた「福浦」(1953年、30号)、「海の村落」(63年、20号)、「福浦突堤」(66年、50号)の3点。昨秋、同美術館に打診し、今回修復が実現した。同センターの内藤朝子さんは「中川が好んで描いた福浦関連の作品から、早急に修復が必要な3作品を美術館の学芸員と選んだ」と説明。
修復作業は、絵画の表面のほこりや汚れを取り除くクリーニングから始まり、作業中の作品保護のための表打ちや、木枠外し、裏面の掃除、裏打ち、絵の具層の固着強化、ワニス掛けなど10項目以上の工程を経て仕上がる。

修復の工程で新たに分かったこともある。今回預かった3点のうち2点は、杉を使った木のパネルにキャンバスが貼られていた。通常、油彩画は木枠に貼るため、この技法は珍しいとされる。内藤さんは「中川の作品は厚塗りなのでキャンバスがその重さに耐えられなくなり次第に画面がゆがんでくる。裏面に板を当てなければならないことを中川自身が学び、パネルを使ったことが3点から推測できる」と話す。11月末に修復を終え、次の企画展では報告を兼ね、同美術館でお披露目を予定している。
「寄付金で絵画を修復することができることや、修復の記録を後世に伝える文化を根ざすことを目指している」と内藤さん。同センターでは寄付を随時受け付けている。
同センター、電話045(231)6006、[HP]https://www.npo-acrc.org/
2021年11月9日公開 | 2021年10月31日神奈川新聞掲載
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