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気になる 横浜のシネマ・ジャック&ベティ開館30周年記念映画「誰かの花」 29日から

「誰かの花」の一場面
「誰かの花」の一場面

 最盛期には約40軒もの映画館がひしめいた横浜。その歴史を受け継ぐ映画館、シネマ・ジャック&ベティ(横浜市中区)が昨年12月に開館30周年を迎え、記念に製作された映画「誰かの花」が、1月29日から上映される。脚本、監督を務めた奥田裕介(35)=同市港北区出身=は「ここで流れていてほしい映画、ここで見たい映画を撮りたかった」と思いを語った。

 「誰かの花」は、30周年記念という祝賀的なイメージとは全く異なり、重いテーマに正面から挑んだ。認知症の父親が犯したかもしれない罪を巡る息子の疑惑と葛藤をミステリー仕立てで描き、良心や正義について見る者に問い掛ける。

 脚本を読んだ同館の梶原俊幸支配人(44)は「お祝いだけで終わるのではなく、その後も残り続けていくような作品を作ろうとしている。それはいいな」と感じたと振り返る。

 当初は奥田監督も、ロケ地として同館を登場させたり、町おこし的な内容を盛り込んだりした方がいいのかと悩んだ。だが、ミニシアター好きの母に連れられて、子どもの頃から同館に通った“原体験”が強く影響して考え直したという。

 友人たちが「ゴジラ」など大作を見ている傍らで、同館で上映されるイラン映画や台湾映画などを見ていた。「帰り道では、母と『あのシーンはこういうことだよね』『いや、こうだよ』と話した。1本の映画にこんなに多面性があるんだ、と面白かった。一緒に見た人と会話が生まれる。撮るならそんな映画を撮りたい」。その思いが「誰かの花」になった。



奥田裕介監督(左)と梶原俊幸支配人=横浜のシネマ・ジャック&ベティ
奥田裕介監督(左)と梶原俊幸支配人=横浜のシネマ・ジャック&ベティ

 鉄工所で働く孝秋(カトウシンスケ)は、徘徊(はいかい)癖のある認知症の父・忠義(高橋長英)と、介護する母・マチ(吉行和子)を気遣い、実家の団地を訪れる。忠義は孝秋を事故で亡くなった兄の名で呼ぶ。遺族同士で思いの丈を語り合う自助グループに参加している孝秋だが、心の内を語ることはない。

 ある風の強い日、団地の住人が、ベランダから落ちてきた植木鉢に当たって亡くなる。それは両親が住む上の部屋に引っ越してきて間もない家族の父親だった。同時刻、家で一人だった忠義。窓は開いたままで、ベランダには土で汚れた手袋が─。

 作品の舞台は同市緑区の竹山団地。「横浜というとみなとみらいなどの観光地が思い浮かぶが、横浜に住まう人を撮りたい」と日常の風景を描いた。

 長編映画は2作目。「善意から生まれた悲劇」というテーマに興味を抱いており、今回は「その先の“救い”をかなり意識して作った」という。

 果たして、孝秋の疑念は晴れて心の救いは訪れるのか。忠義が本当に鉢を落としたのかは、見る人によってさまざまな捉え方ができる表現がなされている。

 奥田監督は「法律や倫理より、普段の僕たちは感情で動いている。その中で、倫理に反するけれど、こんなことを思っていてもいいのかな、など言葉にできない感情を抱えていることもある。その感情に置き場所を与えたい」という。

 梶原支配人は「映画を見て余韻たっぷりで持って帰って、あれは何だったのかと考え、自分の中で完結させる。そんな映画が見られるのがミニシアターのよさ。こういう作品をこれからも上映し続けていきたい」と話した。

2022年1月22日公開 | 2022年1月21日神奈川新聞掲載

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