気になる 「ポストバブルの建築家展」 BankART Station2月19日まで
- BankART Station(横浜市西区)

日本建築界をリードする1960年以降生まれの建築家35組が手掛けた建築物を集めた展覧会「ポストバブルの建築家展-かたちが語るとき-アジール・フロッタン復活プロジェクト」が、みなとみらい線新高島駅地下1階の「BankART Station」(横浜市西区)で開かれている。各建築家による住宅や公共施設の模型などを通じ、それぞれの「かたち」の捉え方を読み解くユニークな展示だ。主催する日本建築設計学会が保存に携わるパリ・セーヌ川に浮かぶ難民避難船「アジール・フロッタン」についても併せて紹介している。
会場には35組の建築家が携わった作品の模型や図面などを、「生活+α」「飲食/宿泊する」「働く/福祉/教育」「集まる/展示」の四つのカテゴリーに分けて紹介している。

当初、同展は日本の若手建築家を紹介する展覧会として、建築家のル・コルビュジエや、その弟子で神奈川ともゆかりが深い前川國男が1929年に改修に携わった、パリのアジール・フロッタン船内で開催を予定していた。しかし2018年に洪水で船が水没。実施が難しくなったため、今回の会場に船内を模した列柱を建て、難民を受け入れたベッドを模型の展示台として配置するなど、船内の一部を原寸で再現して展示した。
それぞれが手掛けた作品と共に、建築家の「かたち」の解釈などを見られることが今展の面白さの一つ。横浜市中区に拠点を置く建築家集団「みかんぐみ」は、長野県の森の斜面に建つ予定の、地面から浮かんで見える地上2階建ての住宅の模型などを展示。「かたちとは街との出会いです」と解釈した説明文も添えられている。個人の住宅、美術館や図書館といった大型公共施設、小学校など異なる建築作品でも、建築家の視点に共通項があるなど、思いがけない発見もある。


キュレーターを務めた建築評論家で建築史家の五十嵐太郎は「建築の持つ『かたち』の力を改めて認識し、環境や社会と建築家がどのような関係性を探求しているか体現してほしい」と話す。「石炭を運ぶ船だったアジール・フロッタンは、難民シェルターから困窮や女性の保護施設など時代によって用途が変わったが、『かたち』は変わらず存在する」と思いを語る。また、今展ではあえて青森県や兵庫県、鹿児島県などに軸足を置く建築家たちを選定。35組のうち、3分の1を超える13組に女性が加わっている。東京中心ではなく地方都市での多様な活動や、女性建築家の活躍を見てもらうことも狙いだという。
パリのアジール・フロッタンは20年に浮上がかない、今後、日仏を結ぶ文化施設に生まれ変わる予定だという。同展をプロデュースした建築家の遠藤秀平は「戦争を乗り越え、日本にモダニズム建築を広げた前川に思いをはせ、船が行き交う港町横浜で『かたち』について再考してほしい」と来場を呼び掛ける。
2月19日まで。700円。19日に併設するカフェでトークイベントを予定(入場料のみ、先着30人)。問い合わせは日本建築設計学会
[メール]office1@adan.or.jp
[HP]http://www.adan.or.jp
2022年2月1日公開 | 2022年1月31日神奈川新聞掲載
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