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気になる ユーモア込めた妻子への手紙 神奈川近代文学館、吉田健一展(上)

吉田健一=1954年、東京都新宿区払方町の自宅前で(写真提供:文藝春秋)
吉田健一=1954年、東京都新宿区払方町の自宅前で(写真提供:文藝春秋)

 文士・吉田健一(1912~77年)は批評、随筆、小説などのジャンルを超えて「文學(ぶんがく)の樂(たのし)み」を繰り返し私たちに語りかけた。

 吉田は戦後、内閣総理大臣を務めることになる吉田茂の長男として誕生。当時外交官だった父の赴任先のヨーロッパや中国で少年時代を過ごし、現地の人々や風土に親しみ、流ちょうな英語と国際感覚を体得する。暁星中学校でフランス語を学び、ケンブリッジ大学に進学するが、日本で文学を仕事とすることを決断し、約半年で大学生活にピリオドを打った。19歳で帰国し、文士への道を歩き始める。

 バレリーの翻訳などで名を知られるようになり、帰国から10年目の41年、29歳のとき結婚する。同年、太平洋戦争が始まり、45年5月に応召。横須賀海兵団に所属し事務を担当した。

 3月には東京大空襲で自宅を焼失しており、妻・信子と2歳だった長男・健介は福島に疎開していた。横須賀海兵団から疎開先の妻子にあてたはがきでは、慣れない環境での信子の体調を気遣いながら、健介の成長に期待し、将来の生活を思い描いている。

 日付不明の1通では横須賀の海岸の美しさをたたえ、かつての領主の舟遊びなども想像しながら、「今年も、昨年も、来年もと言つた具合に、河が流れるのを見詰めて居るのに似た生活を始めたい」「時間は立たせるものなのだ。ともに生きて行くことの他に、一緒に年取(つ)て行くことを楽しみにする」とつづる。(4月30日まで展示)

 7月5日消印の1通では健介に読んであげて欲しいと「ケンスケハイイコカドウカトオモツテヰマス。オトウサマハイイコデバンハゴハンガスムトスグネマス。ケンスケモスグネルノダラウトオモヒマス。」とユーモアを込めて記している。(5月1日から展示)

 戦後、初の自著「英国の文学」を出版し、その後、飛躍的に執筆活動の幅を広げ、食や酒、旅を愛した随筆家、卓越した語学力を礎とした翻訳家などなど、多彩な顔を持つに至った吉田の、夫、父としての一面を伝える貴重な記録だ。(神奈川近代文学館展示課・和田 明子)

 特別展「生誕110年 吉田健一展 文學の樂み」は5月22日(日)まで、神奈川近代文学館(横浜市中区)で開催中。一般700円ほか。月曜休館(2日は開館)。問い合わせは同館、電話045(622)6666。

2022年4月26日公開 | 2022年4月25日神奈川新聞掲載

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