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横浜美術館「Wall Project」 第1弾は村上早さん「Stray Child」

18点の作品が並ぶ仮囲い=横浜美術館前「美術の広場」(横浜市西区)
18点の作品が並ぶ仮囲い=横浜美術館前「美術の広場」(横浜市西区)

 大規模改修工事のために昨年3月から長期休館中の横浜美術館(横浜市西区)が、巨大なアート作品で取り囲まれている。隣接するグランモール公園の「美術の広場」に面した工事用の仮囲いに作品を掲出する企画「Wall Project」で、この3月から始まった第1弾を手がけたのは村上早(さき)(30)=群馬県高崎市在住=。犬や馬など動物を主なモチーフにした版画作品が、道行く人の視線を集めている。

 企画は、同館が2007年から行っている期待の若手アーティストを紹介する取り組みの一環として実施。村上の展示「Stray Child」は、「死と再生」「人間と動物の関係」をテーマに、長さ約90メートルの仮囲いに高さ2・6メートルに拡大した新作を含む18点が物語のように並ぶ。

 展示タイトルと同じ意味を持つ新作「まよいご」(2022年)は、船の上で少女と犬、ウサギ、鹿、鳥などがうずくまる姿が描かれている。シンプルな構図の中に、生き物の絶望に打ちひしがれた心情が見え、まるで今の世界を物語っているようだ。当初は大きなバースデーケーキを描いていたが、ろうそくを吹き消す様子が「ウイルスのまん延を思わせ、幸せを奪う象徴に見えて」方向性を変えたという。村上は「最初から完成図のイメージはなく、銅版に向かいながら物語が生まれてくる」と話す。


新作「まよいご」の前でほほ笑む村上早
新作「まよいご」の前でほほ笑む村上早

 村上は、ポスターカラーで銅版に直接描いた線を腐食させる「リフトグランド・エッチング」などの技法で、自身の記憶やトラウマ(心的外傷)から生まれたモチーフを描く。武蔵野美術大学で銅版画を始め、同大学院在学中の15年に銅版画の登竜門の一つとされる全国公募展「山本鼎(かなえ)版画大賞展」で大賞を受賞した。作品は犬や馬、鳥や虫などの動物がモチーフの中心になることも特徴で、それらは人間を襲う脅威として描かれる一方、痛みを分かち合う身近な存在としても登場している。

 心の傷を、削ったり、溶かしたりといった銅版画特有の工程に重ねて紡ぎ出す作品は、国内外に多くのファンを持つ。制作を「銅版を傷つける」行為と捉え、「銅版に刻まれた線は心の傷、線を埋めるインクは血、インクを載せる紙はガーゼ(包帯)」と語る。「何を描くことが、自分を自然に出せるのだろうかと考えていたところ、それがちょうど銅版画の技法とうまく重なった」と振り返る。

 担当学芸員は「コロナ禍の中で新たな生き方を模索する今、村上作品は弱さを認め合い、謙虚に世界を捉えることの大切さを気づかせてくれる」と解説。「屋外の開放的な空間で作品を眺めながら、街歩きを楽しんでほしい」と呼びかける。

 村上の作品は11月6日まで公開予定。

2022年5月3日公開 | 2022年5月2日神奈川新聞掲載

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