推し
タブレット純のかながわ昭和歌謡波止場(17)
カルーセル麻紀◆愛してヨコハマ

鎌倉で発見 〝回転木馬〟の足跡
タブレットとは、古くは鉄道用語において、金属状の円盤をさしたのだそうです。これは列車の正面衝突を防ぐためのいわば通行手形であったとか。ふーん。これを切り替え装置にお話するのは強引とは思いながら、カルーセル。パソコン画面上のサーチエンジンのうんぬんとして一般化された言葉のようですが、元来は、回転木馬のことだそう。うーん。
タブレット純と、カルーセル麻紀さんに共通項を見い出したのは、ぼくだけに違いありません。ただ、通行手形に回転木馬。デジタルでは魅力を伝え切れない、プリミティブな存在として引用させていただきました(ぼくはさておき)。
そう、先週鎌倉でのこと。60年以上も小町通りで灯をともし続けているスナック「タミー」のママさんから、まん防明けて久々にお店開けるからと大掃除していたらレコードが大量に出てきたと。勇んでひょいひょい宝島に赴くや、その中からカルーセルさんのレコードを数枚発掘。
「お~これはレアだなぁ」とジャケットに見入っていると、地元出身の常連さんから「あ、彼女ね。昔鎌倉のお店で働いてたことあるから、その流れだろうね。銀座の青江って有名なゲイバーは夏休みだけ鎌倉で営業してたんだよ。かれこれ50年前。その頃タミーに来てたんじゃないかなぁ」と聞き、意外な場所でその幻影に遭遇。前回こちら紙上にて麻紀さんの曲を予告したあとだったので、思わぬ連結器をいただき、ひとまずさーっとペンを走らせてみた次第です。

と、つらつら思い出していたらわりと紙幅が…すみません。白状しますと、この「愛してヨコハマ」(1968年、昭和43年)に関しては、カルーセルさんのデビュー盤であり、ぼくのレコード棚に長年眠り続けていたというだけで、特別に蘊蓄(うんちく)話を持ち合わせているわけではありません。ただこのたび、「鎌倉の麻紀さん」とつながれたことで、より“かながわ歌謡”としての造詣が深まり、リスペクトを込められた次第です。
歌の内容はというと、これは「伊勢佐木町ブルース」のセクシーためいき路線。B面が「バナナ・ボーイ」なのは、ふふふご愛嬌(あいきょう)。いずれもキュートなお召し物です。ただし、麻紀さんが神奈川に残した足跡はほんのひとかけらに過ぎません。
釧路で出生し、15歳で家出してからは、大阪に落ち着くまでの4年間だけでも全国各地のゲイバーを中心に回り歩くこと、13都市16回の転居。ついでにいえば、これまでに数十人との同居を経験したという麻紀さんは、それこそ人間回転木馬。ふと、シャンソンが流れます。♪いつも世界が回って夢中にさせる 回転木馬はお前のことさ…(「私の回転木馬」)

横浜がデビュー曲になったゆかりは判然としませんが、それこそ麻紀さんこそ、“生きる人間港”といえるのではないか。人となりを知る皆さんがそろって、人生に疲れた時のよりどころとして麻紀さんを慕っているご様子がうかがえます。それは横浜の港町もしかり。どれだけビルが乱立しようと、海は変わらず昔のまま、懐かしい風で人間を愛してくれます。
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