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二人芝居
KAAT神奈川芸術劇場で戯曲「テーバスランド」 「現代の父殺し」を描いた話題作

南米ウルグアイ出身の劇作家セルヒオ・ブランコの戯曲「テーバスランド」(演出・大澤遊)が今月から来月にかけて、KAAT神奈川芸術劇場(横浜市中区)で上演される。日本初演の本作は世界各国で高評価を受けた二人芝居。神話をベースに「現代の父殺し」を描く話題作に、俳優の甲本雅裕と浜中文一が挑む。
甲本演じる劇作家Sと、浜中が一人二役で臨む受刑者マルティン、俳優フェデリコの3人が登場する。劇作家Sは、父親をあやめた罪で終身刑に処されたマルティンの物語を演劇にしようと企画し、マルティン役にフェデリコを起用する。
劇作家Sによる観客への語り、刑務所でのマルティンとの対話、フェデリコとのリハーサルが交互に展開され、気が付けば観客も物語に入り込む。見ているシーンが現実なのか虚構なのか、境界が曖昧になっていくのも本作の魅力だ。
この曖昧さを「迷路のよう」と表現しつつ、「いい迷い方ができる作品」と語る甲本。ギリシャ神話に登場するオイディプスの「父殺し」がモチーフとなっているが、「見る人それぞれに何か近しいものが感じられて、決して特別な題材ではない」と普遍性を見いだす。

一方、マルティンとフェデリコを演じる浜中。身に着けるものが変わらないことなどから2人の差異が次第に不明瞭になることを踏まえ「お客さんは少し混乱すると思います。でもどう捉えてもいい。自由な感覚で舞台を見てほしい」と話す。
「読み物としてすごく面白い」と甲本が言うように、緻密に練り上げられたせりふに引き込まれる本作をいかに演劇として成立させるか。ともに初の二人芝居で、膨大なせりふ量に苦戦したと明かす2人だが「書かれていないところを僕たちがどう芝居するか」が重要だと甲本は続ける。
「せりふを話していない時に見えてくるものが芝居なのかな。密集する活字の中に隙間を見つけることで、読み物にとどまらない演劇としての魅力を打ち出せると思うんです」
父親との軋轢(あつれき)、孤独と疎外感。登場人物からにじむ苦難に反し、私ではない誰かとの偶然の出会いによって一つの希望も描かれていると、2人はみる。
「マルティン、フェデリコともに劇作家Sとの出会いはものすごい光だったと思います」と浜中。甲本もマルティンと相対する刑務所の場面を稽古する過程で「ある種の自由を感じる自分がいた」という。
現代を舞台にした「父殺し」がどのように展開するのか。両者ともに「この作品は参加型。共に役に出会い、一つ一つの描写を目撃しながら一緒に舞台を創り上げてほしい」と、観客への期待を込めた。
翻訳は仮屋浩子。6月17日~7月3日(6月20、21、27、28日休演)。6800円。問い合わせはチケットスペース、電話03(3234)9999。
2022年6月13日公開 | 2022年6月10日神奈川新聞掲載
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