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ドナルド・キーン展─日本文化へのひとすじの道 日本文化との出合い

エイダック島で。後列左端がキーン。銃を持ち、左脇に和英辞典を抱えている(1943年)
エイダック島で。後列左端がキーン。銃を持ち、左脇に和英辞典を抱えている(1943年)

 日本文化の「伝道師」ドナルド・キーン(1922~2019年)。彼が日本文化に魅了されたのは1940年、18歳の時だった。

 コロンビア大学に入学後中国系のクラスメートから漢字を学んでいたキーンは、街角の本屋で偶然アーサー・ウエーリが訳した紫式部「源氏物語」を手に取る。当時、世界はドイツや日本による軍事侵攻によって、戦火が拡大していく状況にあった。幼時から父親による「極端な平和教育」を施されたキーンにとって日本は憎むべき軍事国家。しかしその国で千年も前に誕生した物語には、戦争も戦士も登場せず、貴族たちの愛と苦悩の遍歴がみやびやかにつづられていたのである。キーンは暗い現実から逃れるように源氏の世界に心を奪われていき、日本へ関心を寄せていった。

 大学卒業時に海軍日本語学校への進学を選択。「日本語を勉強しにいく」のだから平和主義と入隊は矛盾しなかった。1年足らずで日本語をマスターしたキーンは、同僚たちと戦場に赴く。激戦地では玉砕を目の当たりにし衝撃を受けた。特攻機の攻撃を危うく免れたこともある。

 キーンの任務は日本人捕虜の尋問や戦死した日本兵が書き残した文書の解読である。その中には日記や遺書のたぐいもあり、時に血まみれのページをめくりながら、キーンは戦死を覚悟し家族への思いなどを率直に記した内容に深い感銘を受ける。


「百代の過客」「続 百代の過客」(1984、88年、朝日新聞社)とその英語版
「百代の過客」「続 百代の過客」(1984、88年、朝日新聞社)とその英語版

 戦地での経験はキーンのその後の針路を方向付けた。日記文学を日本文学の大きな特徴と捉え、古代から明治期までの日記を文学史的に系統立てた「百代(はくたい)の過客(かかく)」はキーンの代表作の一つとなった。また正岡子規、石川啄木らの日記の研究は生涯継続していた。

 さらに永井荷風、山田風太郎、高見順らの敗戦前後の日記から激動の時代の日本人像をたどった「日本人の戦争」や、小田実(まこと)「玉砕」の翻訳に取り組んだキーンの姿勢からは、戦争の惨禍を忘れてはならないという思いが伝わってくる。源氏物語の美を愛したキーンは、戦争によって伝統や文化が破壊されるのを何よりも恐れていたのである。(神奈川近代文学館展示課・半田 典子)

 特別展「生誕100年 ドナルド・キーン展─日本文化へのひとすじの道」は7月24日まで、神奈川近代文学館(横浜市中区)で開催中。一般700円ほか。月曜休館(18日は開館)。問い合わせは同館、電話045(622)6666。

2022年6月27日公開 | 2022年6月27日神奈川新聞掲載

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