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津村謙◆上海帰りのリル

作詞/東條寿三郎・作曲/渡久地政信
作詞/東條寿三郎・作曲/渡久地政信

和洋折衷の名曲 国民を魅了

 前回の「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」は、そのブームから勢い余って、いくつかのアンサーソングがつくられました。「帰ってきた港のヨーコ」として無事身柄を確保されたかと思えば、「逃亡編」として悪ノリスピンオフ! 全国にヨーコ捜査網が張り巡らされ、そんなアルバムまで。

 しかしさかのぼれば、1951(昭和26)年にもその元祖たる“アンサー現象”がありました。神奈川県警空想署には、そのお尋ね界のジャンヌダルクたる女性のビラが、今も大衆の心から剝がされることはありません。それが、リル…。

 お恥ずかしいのですが、この「上海帰りのリル」自体が、そもそもアンサーソングであることを今回初めて知りました。アメリカのミュージカル映画「フットライト・パレード」で歌われたナンバーの一つで、日本ではディック・ミネさんらがカバーした「上海リル」がそのモチーフ。これをふまえて、「異国であえなく別れたその人が横浜に帰ってきていた」というストーリーを日本人の心だけでセンチメンタルに“再上映”したということになります。


クリスマスのキャバレー=横浜市中区(1956年、神奈川新聞社撮影)
クリスマスのキャバレー=横浜市中区(1956年、神奈川新聞社撮影)

 じっさいこの大ヒットはすべからく歌謡映画化ももたらしたのですが、リルの著作権とかは大丈夫だったのかな? ミッキーマウスやべティ・ブープが平気で神社の縁日なんかで笑っていた時代ならではの産物ともいえるのかも。とはいえそのクオリティーは和洋折衷の真骨頂、モダンな西洋建築のごとき可憐(かれん)さで国民の心を奪いました。

 編曲が“元祖シンガー・ソングライター”林伊佐緒さん(豪華!)というのも今回初めて知り、なるほど、ダンスパーティーなシャンデリアがそこかしこに光ります。「もはや戦後ではない」の言葉はこの5年後になりますが、“敵国”の影響を受けつつもわが国の物語として昇華したことは、新しい時代の萌芽(ほうが)といえるではないでしょうか。

 それにしても、この過熱ぶりはヨーコも顔負けと思われ。「リルを探してくれないか」「心のリルよなぜ遠い」「私がリルよ」「私は銀座リル」「私はリルの妹よ」「霧の港のリル」…まるで砂浜から小判が発見されたかのような騒ぎです。しかしこれを歌った津村謙さんは、大スターのただ中に、自宅のガレージで事故死してしまいました。「家族を起こすのは忍びない」と、帰宅した深夜の車中でそのまま排ガスに巻かれ…。


絵/タブレット純
絵/タブレット純

 そして、ぼくのなかで思い出されるのは「俺たちの旅」のとある回。下條正巳さん演じる屋台のおでん屋さんに、妻子を捨てて蒸発した過去があることを知った中村雅俊演じるカースケたち。やがてその生き別れになった娘(宇都宮雅代。シブイ)がラジオDJになっていていることをつきとめ、娘は幼き日の面影をたどるように父が好きだった曲をかけ続けていました。それが、リル。

 カースケたちは娘と父を再会させる段取りまでしつらえるのですが、屋台のオヤジさんは「家族を捨てた者はそれなりの生き方をしなくてはならない」とひっそり別の町へフェードアウト…。男はいつも悲しい。

 これらがスライドされ、ぼくのなかでは結局リルは見つからなかったのだろう、それでいいんだ、という解釈に。そういえばカースケの役名も津村、今宵(こよい)はツムラの入浴剤を変わり風呂にしている銭湯に行って、湯船のもやでリルを慕うことにいたします~。


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