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映画「ある惑星の散文」 舞台は本牧、人生の岐路に立つ女性2人の心情に街の風景が寄り添う

横浜市中区の本牧地区を舞台にした映画「ある惑星の散文」が23日から、横浜のシネマ・ジャック&ベティ(同区)で上映される。人生の岐路に立つ女性2人の心情に街の風景が寄り添うような作品だ。本牧のさまざまな側面に魅了されたという深田隆之監督(34)は「画面で切り取ったら、本牧の重層的な歴史がより見えてきた」と語る。
恋人の映画監督と一緒に暮らすため本牧へやって来た脚本家志望のルイ(富岡英里子)。俳優として舞台に立っていたが、精神疾患により今はカフェで働く芽衣子(中川ゆかり)。悩みながらも前へ進んでいこうとする2人の姿を描く。
ルイが海外に行っている恋人を待ち続けるアパートや、親の介護を相談にきた兄と芽衣子がぶらつく街など、全て本牧が舞台だ。
同市港北区在住の深田は、地域再生事業として2013年に始まった「本牧アートプロジェクト」を体験するために初めて同地を訪れ、魅了されたという。

「巨大なトラックが走る一方、道を挟むと住宅街、山を登ると違う景色が広がる。ちょっと道を外れただけで景色が変わっていく、その差に魅力を感じた」
本牧が持つ独自の歴史も琴線に触れた。「米軍に接収されていた影響で『東京より本牧』といわれるほど、日本の文化の発信地だった。だが、現在は接収の歴史も忘れられている感覚がある」
街を歩きながら「ここに彼女たちがいるかもしれない、と実感しながら」脚本を書き進めた。特に11年に閉館した映画館、旧マイカル松竹シネマズ本牧のがらんとした空間に引きつけられた。「シネコンでがらんどうって、恐らく他にはない。ここを使わない手はない」と、芽衣子が自分の生き方に決着をつける重要な場面に生かされた。
昨年公開された濱口竜介監督のオムニバス映画「偶然と想像」では助監督を務め、2話目に登場する大学の講義シーンの演出も担当した。他にも候補者がいたが、「ある惑星─」を見た濱口監督から任せられた。作品を見せてほしいと言われた際は「どんな映画祭にエントリーするより怖かった」と笑う。
「『ある惑星─』は、俳優と話したり、いろんなことを試したりして、かなり時間をかけて撮った。そうしないといいものはできないな、という思いがあった。濱口監督も、実験を繰り返していいものを選び出すなど時間をかけて撮影していた。『そうだよね』と再確認する経験になった」
2022年7月15日公開 | 2022年7月15日神奈川新聞掲載
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