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劇団民芸が、島崎藤村原作の「破戒」を稽古場公演

稽古場公演への意気込みを語る齊藤尊史(左)と岡本健一=川崎市麻生区
稽古場公演への意気込みを語る齊藤尊史(左)と岡本健一=川崎市麻生区

 川崎市麻生区に拠点を置く劇団民芸がこの夏、島崎藤村原作の「破戒」を同区内の稽古場で上演する。部落差別をテーマにした本作といかに向き合うか。演出の岡本健一と主人公を演じる齊藤尊史は「より自分事として捉えられる」演劇ならではの強みを語る。

 「決して打ち明けるな。『部落』の者だということを言うなよ。もしこの戒めを忘れたら、その時こそ、世の中から捨てられる日と思え」

 信州の被差別部落に生まれた小学校教師の瀬川丑松(うしまつ)は、父親から出自を隠し通すことを訓戒とされていた。同じく被差別部落出身の思想家、猪子蓮太郎の著書に感化されながら、非道な身分差別を前に葛藤を深めていく─。

 「破戒」は1948年、民芸の前身・民衆芸術劇場が旗揚げ時に上演した記念の一作。以来民芸で再演されることはなかったが、岡本の希望で74年ぶりに日の目を見ることになった。

 当時の台本を読み「衝撃を受けた」と岡本。「素性を隠さないと生きていけない、出身地がばれた時点で社会から追放されてしまう、その状況が衝撃だった」。父の戒めが記される冒頭の数ページを読み、演出を即決したという。

 「役の大きさと責任の重大さに押しつぶされそう」と緊張の面持ちで語るのは、丑松を演じる齊藤。「部落差別は今も残る。関係している人が見た時にどのように感じてもらえるか」と気を引き締めつつ「丑松の言葉がどこまで自分の内側から出せるかが課題」と役の内面を掘り下げている。


民衆芸術劇場が旗揚げ時に上演した「破戒」の台本
民衆芸術劇場が旗揚げ時に上演した「破戒」の台本

 「破戒」は公開中の最新作を含めて3回映画化されているが、「映像や小説とは全く異なる時間が流れる」と岡本は言う。「物語の中に生きる人物が何を感じ考えているのか。生身の肉体を通じてダイレクトに伝わるのが、演劇じゃないと味わえないものです」

 齊藤も「演劇ならではの強さがあるのではないか」とうなずく。「観客は舞台に出ている人間全員が目に入る。誰を目で追うかは自分次第。より自らの視点や感覚に向き合う時間になると思います」

 82年に東京・青山から川崎に拠点を移し40年となる民芸。およそ30年前から続けている稽古場公演を発展させ、新たな創造と出会いの場にしようと今回は劇団所属ではない岡本に演出を依頼した。くしくも今年は被差別部落の人々が人間の尊厳を求め全国水平社を創立して100年の節目でもある。

 実はその節目を意識せず「破戒」を上演作に決めた岡本。国内外で人種や性的マイノリティーへの差別が横行する現状も踏まえ「2022年の日本で上演しないといけない必然性があったのではないか」。齊藤も「内に潜む差別意識に向き合う作品」として今の時代に上演する意義を語る。


舞台「破戒」の稽古で演出する岡本健一=川崎市麻生区(劇団民芸提供)
舞台「破戒」の稽古で演出する岡本健一=川崎市麻生区(劇団民芸提供)

舞台「破戒」の稽古で演出する岡本健一=川崎市麻生区(劇団民芸提供)
舞台「破戒」の稽古で演出する岡本健一=川崎市麻生区(劇団民芸提供)

 岡本が目指すのは原作者に喜ばれる舞台という。「こんな発想があったのかと藤村が拍手するような空間にしたい。役者の心が動いてさえいれば、そこにたどり着けるんじゃないかな」

 脚色は村山知義。7月30日~8月9日。一般5500円、30歳以下3300円ほか。稽古場は京王線若葉台駅から徒歩5分、小田急線黒川駅から徒歩8分。問い合わせ、チケット申し込みは劇団民芸、電話044(987)7711。

2022年7月21日公開 | 2022年7月20日神奈川新聞掲載

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