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気になる まちを耕す本屋さん<7>
書店「BOOK STAND 若葉台」 団地に書店を取り戻したい

開店に向けて準備を進める三田さん。明るい店内はオープン前から住民の関心を集める。充実した品ぞろえのため、クラウドファンディングサイト「Good Morning」で9月15日まで支援を受付中=BOOK STAND 若葉台(横浜市旭区)
開店に向けて準備を進める三田さん。明るい店内はオープン前から住民の関心を集める。充実した品ぞろえのため、クラウドファンディングサイト「Good Morning」で9月15日まで支援を受付中=BOOK STAND 若葉台(横浜市旭区)

 約1万3千人が暮らす若葉台団地(横浜市旭区)に27日、書店「BOOK STAND 若葉台」が開店する。店主は移動式本屋の運営など本を扱う仕事に長く携わり、自らも同団地に住む三田修平さん。積み重ねた経験と、コミュニティーへの思いを凝縮した店を「他の団地でも本屋を取り戻せるようなモデルケースにできたら」と将来を見据える。

 同店は、27日にオープンする団地の多様多世代交流拠点「わかばダイバーシティスペースWakka(わっか)」の一角で開業する。新刊書籍や自主制作の出版物「ZINE(ジン)」、古本を合わせて約5千冊でスタートし、将来的には1万冊をそろえる予定。オンラインでの買い物が困難な高齢者も多く暮らすことから、本の取り寄せや雑誌の定期購読にも注力する。

 店舗は、通りに面した場所にドリンクスタンドを併設するなど、幅広い世代が集いやすい設計を意識。文化的な彩りとなる展示スペースも設け、21日からイラストレーターの佐伯ゆう子さんの作品展を予定する。「リアルな本屋は、未知の世界との接点を作る社会的機能」と語る三田さん。「子どもたちが優れたデザインやアートに触れられる催しも企画したい」と構想を温めている。


トラックいっぱいに書籍を積んだ「BOOK TRUCK」はミュージシャンのYOASOBIとコラボするなど人気を集めている
トラックいっぱいに書籍を積んだ「BOOK TRUCK」はミュージシャンのYOASOBIとコラボするなど人気を集めている

 若葉台団地では2019年に書店が撤退。県住宅供給公社や住民有志が書店の誘致を模索する中で三田さんに声がかかり、21年の春から新書店開設のプロジェクトが始動した。書店を交流拠点の一部として、国土交通省の補助金を活用したという。

 三田さんは左近山団地(同区)で生まれた「生粋の団地っ子」。子どものころ、同団地に来ていた「移動図書館」に親しんだ経験を元に、12年に移動式本屋「BOOK TRUCK」を立ち上げた。大学卒業後は六本木や渋谷の最先端の書店で経験を積み、企業向けの選書サービスなども手がけてきた。

 最寄りの駅に行くにはバスが不可欠で、アクセスが良いとはいえない若葉台団地。「団地でなくとも、自分のまちに本屋があるのがぜいたくな時代」だが「住んでいる人の顔が見える環境だからこそ持続可能な本屋の形はあるはずだし、そこに挑戦するのが使命だと思った」と決意をにじませる。「団地の外からもお客さんを呼び込み、若い世代に『ここで暮らすのもいいな』と思ってもらえたら」

 仕事柄、本屋のトレンドを目の当たりにしてきた三田さん。この十数年、カリスマ店主が興した都内の独立系書店や地方のユニークな本屋のブームがあったが、神奈川はそのどちらの流れの中にもない、と分析する。「県内でも、海に面したエリアに観光資源や文化的な店が集まりやすく、シビックプライド(都市に対する市民の誇り)を持つのが難しいベッドタウンでは自ら何かを生み出すことが必要。『この団地にはこの本屋がある』と誇りにつながるような店にしたいですね」


機動力があるオリジナルの什器。設計・製作は横浜国立大の学生である伊波航さん、奥野慎さん、照井遥仁さん、日比野莉良さん、三嶌大介さん、結城理子さんと設計事務所に勤める鷹野魁斗さんが担当した
機動力があるオリジナルの什器。設計・製作は横浜国立大の学生である伊波航さん、奥野慎さん、照井遥仁さん、日比野莉良さん、三嶌大介さん、結城理子さんと設計事務所に勤める鷹野魁斗さんが担当した

 活字離れ、書籍のオンライン販売の増加、電子書籍の普及など、書店に吹き付ける風は冷たく厳しい。出版科学研究所の調査によると、1999年から2020年にかけて書店はほぼ半減し、県内でも「本屋のないまち」が増えている。そんな中で、本を中心に人が集う場所づくりを通して、新しい風を起こそうとする人たちの姿を追った。

2022年8月15日公開 | 2022年8月15日神奈川新聞掲載

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