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「小松美羽展 岡本太郎に挑む-霊性とマンダラ」 川崎市岡本太郎美術館

現代アーティスト、小松美羽(みわ)(37)の国内での本格的な個展「小松美羽展 岡本太郎に挑む-霊性とマンダラ」が、川崎市岡本太郎美術館(同市多摩区)で開かれている。小松が京都・東寺で制作した大作を初披露しているほか、初期作品の銅版画から最新作まで、絵画や立体作品など約100点を展示。日本人の意識の底にある力強い生命力や美を見いだして作品にぶつけ続けた岡本太郎に対峙(たいじ)し、国境や宗教を超えた世界観で挑んだ、エネルギーにあふれる小松の作品を体感できる。
小松は1984年、長野県生まれ。女子美術大学短期大学部卒業後は銅版画に取り組み、近年ではアクリル画、有田焼なども手がけている。作品は英国・大英博物館や米国・ワールドトレードセンターなどに収蔵。アートワークの提供やライブペインティングなども行い、国内外で精力的に活動している。
長野の豊かな自然の中で生き物の生と死を間近に見た経験から、独自の死生観を養った。作品として描くのは、日本の神々の使いや神獣、人々の祈りなど「見えない何か」からインスピレーションを得たもの。「アートは魂を癒やす薬」と考える小松にとって、作品制作は祈りとともにあり、「神事」だという。

会場は岡本太郎のブロンズ作品「渾沌(こんとん)」(62年)を中心に据え、小松の作品である神獣や曼荼羅(まんだら)などを配置。「線描との出逢(であ)い」「色彩の獲得」など五つのテーマで構成する。
見どころの一つは、真言宗総本山「東寺」(教王護国寺、京都市南区)のために制作した「ネクストマンダラ─大調和」(2022年)の展示。東寺の「真言立教開宗の法要に当たって曼荼羅を描いてもらい、世界平和を祈りたい」という思いを受け、5月上旬から約1カ月、瞑想(めいそう)と制作に没頭し描き上げた作品だ。真言宗最高法儀といわれる後七日御修法(ごしちにちみしほ)で用いられる「両界曼荼羅図」と同じ4メートル四方の大きな2枚の和紙に金箔(きんぱく)を貼り、その上に曼荼羅を制作。儀式の行われる灌頂院(かんじょいん)の空間構成を再現した。表装し、23年に真言宗立教開宗1200年を記念して東寺に奉納される。
14年に小松が出雲大社に奉納した「新・風土記」も特別公開。通常、奉納作品は一般公開されないが、作家の強い希望で展示が実現した。

6月に同館のシンボルタワー「母の塔」の前でライブペインティングした作品も展示。身長より大きな2枚のキャンバスに絵の具を塗りつけ、手指で線を描くなどエネルギッシュに動き、完成させた。小松は「尊敬する岡本太郎さんの思いやエネルギーを感じ、圧倒されながらも、多くの人の心や魂が救われるよう、祈りを込めて描いた」と語る。異彩を放つ作品は、見る人の心を揺り動かし、現代社会に生きる力を与えるようだ。
28日まで。一般千円ほか。観覧は日時指定予約制。問い合わせは同館電話044(900)9898。
2022年8月22日公開 | 2022年8月22日神奈川新聞掲載
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