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寺内タケシとバニーズ◆愛のリメンバー

作詞・作曲/鈴木義之
作詞・作曲/鈴木義之

ハマのGSが歌う キラキラの海

 レコードジャケットに“時空超えサイン”をいただくことをひそかな愉(たの)しみにしているぼく。青春のお写真に、年輪というインクをにじませていただくわけですが、たいてい皆さん「若かったな~」などと苦笑しつつも、軽快にペンを走らせてくださいます。それはきっと、そこから今までの道のりに誇りを感じておられるからでしょう。あ、ほんとはいやいやだったらごめんなさい~。

 ここにある寺内タケシとバニーズ「愛のリメンバー」(1967年・昭和42年)にも、ひとつの消えない“リメンバー”が刻印。担当していたラジオのゲストにいらした黒沢博さんもまた、自分の“出身校”に寄せ書きをするごとく、懐かしそうに目を細めてくださいました。そしてラジオ本番中には、ギターを持っているぼくを見て「せっかくだから何かやろうよ」と気さくに投げかけてくださり、2人だけの「愛のリメンバー」が実現! 後追いGS(グループ・サウンズ)ファンであるぼくとの、“時空を超えたハーモニー”が響きました。“エレキの神様”に遠く及ばぬ紙切れのような、ぺらぺらなギターでお恥ずかしかったのですが…。


海辺の恋人たち(2018年、神奈川新聞社撮影)
海辺の恋人たち(2018年、神奈川新聞社撮影)

 そう、ハマのGSといえば、どうしてもザ・ゴールデン・カップスが先に浮かびますが、彼らバニーズもまた横浜のバンド。寺内さんが市内のアマチュアバンドからメンバーを引き抜いて発足しました。寺内さんご自身は、出身こそ茨城は土浦ですが、横浜の関東学院大学OBであり、また加山雄三さんの薫陶を受け、“弾厚作”の第一作目「夜空の星」のアレンジも任されているわけですから、立派な湘南紳士録。高校生の頃、横浜の路地裏を歩いていて、ふと、雑居ビルのプレートに、寺内さんが立ち上げられた伝統ある「寺内企画」の文字を見つけた時は感動したなぁ。

 エレキの御大を据え、他の追随を許さない演奏力で、GSブームの“ご意見番”のように君臨したバニーズですが、この「愛のリメンバー」は…あれ? ほとんどエレキが聞こえてきません。ジャケットにも、寺内さんが片隅の囲みにちいさく写っている程度。というのも、実はこのあたりから寺内さんは、いずれは彼らのみで独立するよう絵を描いていたと思われ、じっさい翌年になると寺内さんはやがて“ゲスト扱い”となり、「荻野達也とバニーズ」として彼らのバックアップをするような格好に。

 なので「愛のリメンバー」は、その布石といった曲になるのですが、エレキ抜きでも、メンバーの鈴木義之さんのペンによるこの曲は珠玉の名曲。当時レギュラーだった日本テレビ「プラチナゴールデンショー」でよく演奏されていたそう、偶然な万年筆メーカーさんの社名のシンクロながら、プラチナ色のキラキラした、やはりヨコハマの海が心に広がります。


絵/タブレット純
絵/タブレット純

 その後、独立ではなく“決裂”してしまった寺内さんとバニーズですが、後年、CM音楽の大家となられていた鈴木さんの、その訃報に接しては「親より先に逝くやつがあるか」とばかりに寺内さんが丸2日間葬儀に付き添われたそう。そんな寺内さんも昨年、泉下の人となりました。

 メンバー唯一、現役バリバリで舞台に立つ黒沢さん、鎌倉で定期的にディナーショーをされていて「遊びにおいでよ」とお声がけくださったものの、コロナ禍もあっていまだ果たせていません。

 「ギターは苦手」と語っていた黒沢さんですが、底抜けに明るいオヤジギャグの速射砲に(ゴメンナサイ!)、客席で抱腹する日を楽しみにしております。


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