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性教育をタブー視しない 産婦人科医の遠見さんが絵本刊行

[左から]「うみとりくのからだのはなし」(1430円)「あかちゃんがうまれるまで」(1650円)「おとなになるっていうこと」(1650円)
[左から]「うみとりくのからだのはなし」(1430円)「あかちゃんがうまれるまで」(1650円)「おとなになるっていうこと」(1650円)

 「赤ちゃんってどうやってできるの?」。子どもに聞かれてドキッとした経験はないだろうか。産婦人科医の遠見才希子さん(38)=藤沢市出身=は、子どもの性にまつわる疑問を肯定的に受け止めることが、信頼関係を築く上で重要だと説く。関連の絵本を手がけた遠見さんに、子どもたちに寄り添う性教育の心得を聞いた。


「1回きりの講演と違い、家庭での性教育は何度でもやり直しができる」と話す遠見才希子さん(撮影・柳原久子)
「1回きりの講演と違い、家庭での性教育は何度でもやり直しができる」と話す遠見才希子さん(撮影・柳原久子)

 2005年以降、千カ所以上で中高生らに性教育の講演を行ってきた遠見さん。この春、未就学児から小学生をターゲットに性と体をテーマにした絵本3冊を刊行した。切り口は異なるが「子どもの不安や好奇心に寄り添う存在でいよう」という大人への共通のメッセージを込めている。

 タイトルは「うみとりくのからだのはなし」(絵・佐々木一澄)、「あかちゃんがうまれるまで」(絵・相野谷由起)、「おとなになるっていうこと」(絵・和歌山静子)。いずれも遠見さん作で童心社から刊行された。


「あかちゃんがうまれるまで」の一場面。多様な出産方法を描いている
「あかちゃんがうまれるまで」の一場面。多様な出産方法を描いている

 「うみとりく─」の主人公は双子の「うみ」と「りく」。自分の体に触れられた時に抱く気持ちと向き合い、自身と他者の体を大切にする姿勢を育む。「あかちゃんが─」は妊娠から誕生までの過程を温かいタッチで描いた一冊。性交の場面を盛り込むなど、科学的に描写しているのも特徴だ。「おとなになる─」は月経や勃起など第2次性徴における体の変化や、多様な性の在り方を学ぶ姉と弟が登場する。

 子どもたちが自分事として捉えられるよう、子どもが主役の物語に仕立てたと遠見さん。「正しい知識を教え導くというより、子どもも大人も同じ視線で学べるツールにしたいと思った」と明かす。


「あかちゃんがうまれるまで」の一場面。性交は両者を対等に描くことを意識したという
「あかちゃんがうまれるまで」の一場面。性交は両者を対等に描くことを意識したという

 性教育に携わった当初は、性被害に遭ってほしくない一心で「説教モードになってしまっていた」と振り返る。「例えばプライベートパーツは隠さないとだめ、といった具合にネガティブな発信をしていた」。それは自分の体の一部が恥ずかしいものという否定的な刷り込みにつながる上、子どもに自衛させることがメインになっていた。


妊娠の過程を科学的に説明する「あかちゃんがうまれるまで」の一場面
妊娠の過程を科学的に説明する「あかちゃんがうまれるまで」の一場面

 ポジティブな発想に転換し、性暴力についても自衛よりも加害を減らす視点を持つことが重要との思いが絵本制作の背景にあったという。

 さらに、国連教育科学文化機関(ユネスコ)などがまとめた「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」では、性教育の目的を「性的自己決定力を育み、他者を尊重しながら健康と幸せの実現につなげること」を前提にしていると遠見さんは指摘する。


生理用品を詳しく解説する「おとなになるっていうこと」の一場面
生理用品を詳しく解説する「おとなになるっていうこと」の一場面

 「誰もがかけがえのない体を持ち、その人らしく生きる権利があるという人権の視点が性教育のベースにあるんです」

 絵本には「赤ちゃんはどうやってできるの」という子どもの問いに医師が「いい質問だね」と応じる場面も。子どもが性の悩みにぶつかった時、否定せず受け止める大人が一人でも多くそばにいてほしいとの願いが込められている。


「おとなになるっていうこと」の一場面。ジェンダーもテーマにしている
「おとなになるっていうこと」の一場面。ジェンダーもテーマにしている

 「性に関する失敗や傷つきは誰にでも起こり得るもの。でも、妊娠や性感染症について親にだけは相談できなかったという中高生もいます。大人が性の情報をアップデートしないと、安易に子どもを責める言動をしてしまう危険性があることを知ってほしい」

 日頃から性をタブー視しないことが信頼への一歩だと遠見さん。自身も子育て中で、家庭での性教育は「日々模索中」と笑いつつ、絵本を使って子どもとのコミュニケーションを深めてほしいと期待する。


「りくとうみのからだのはなし」の一場面。登場人物が多様に描かれている
「りくとうみのからだのはなし」の一場面。登場人物が多様に描かれている

 「今の保護者の多くは性教育を受ける機会がほとんどなかった。性交の場面を絵本に入れていいのかといった戸惑いもあると思うが、今こそ子どもと一緒にステップアップしたい。構えずに性教育と向き合ってもらえたらうれしいです」


「りくとうみのからだのはなし」の一場面
「りくとうみのからだのはなし」の一場面

2022年9月20日公開 | 2022年9月20日神奈川新聞掲載

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