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映画「秘密の森の、その向こう」 娘、母、祖母の3世代が時空を超えてつなぐ癒やしの物語

23日から横浜ブルク13、109シネマズ川崎などで上映中。
「燃ゆる女の肖像」でレズビアン映画の傑作を世に放ったセリーヌ・シアマ監督。最新作で描くのは、娘、母、祖母の3世代が時空を超えて交わる物語。深い余韻をぎゅっと抱きしめたくなる、小さな宝物のような名画だ。
8歳のネリー(ジョセフィーヌ・サンス=写真左)は両親と共に、森の中にたたずむ祖母の家を訪れる。最愛の祖母が亡くなり、母が幼少期を過ごしたこの家を片づけることになったのだ。だが、悲しみに暮れる母は一人で姿を消してしまう。時を同じくして、ネリーは森の中で同い年のマリオン(ガブリエル・サンス=同右)と出会う。自分にそっくりなその少女は、なんと幼い頃の母だった。
互いの孤独を分かち合うように、不思議な友情を育んでいく。二度と会えない現実、かけるべき言葉を伝えられなかった後悔。大切な人の死は耐えがたい苦しみを伴うが、少女たちが紡ぐはかなくも優しい世界が、喪失の痛みをそっと包み込む。
前作「燃ゆる─」同様、静謐(せいひつ)でぬくもりに満ちた作風が心に染み入り心地いい。ネリーとマリオンを演じたのは映画初出演の双子のサンス姉妹。仰々しさのない抑制の効いた演技が、少女たちの心の機微を際立たせた。
まだ母になる前の母と出会えたら。そんな想像を膨らませては切なさが込み上げる。生涯忘れ得ぬ美しい映画に出合えた。
監督・脚本/セリーヌ・シアマ
製作/フランス、1時間13分
2022年9月26日公開 | 2022年9月23日神奈川新聞掲載
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