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12月7日、神奈川フィル「第九」 生ならではの空気感や熱量を楽しんで

子どもたち300人を無料招待する神奈川フィルハーモニー管弦楽団(神奈川フィル)の特別演奏会が12月7日、ミューザ川崎シンフォニーホール(川崎市幸区)で開催される。演奏されるのはベートーベンの交響曲第9番「合唱付き」。指揮者の三ツ橋敬子(42)は「生ならではの空気感や熱量を楽しんで」と来場を呼びかけた。
三ツ橋は、県立音楽堂の子ども向け企画「夏休みオーケストラ」や、学校での演奏活動などを神奈川フィルと共に取り組んできた。
「われわれの想像を超えたところに子どもたちの反応があって、驚くこともある」と明かす。最近、同じ音型を繰り返す「ミニマル・ミュージック」を演奏した際も、子どもが熱狂するのを目の当たりにしたと話す。
「大人が『これは子どもにいいだろうな』と思うこととは必ずしも一致しないことに、大きな光を見る感じがしました」
交響曲として初めて歌を取り入れた歴史的な傑作「第九」では、言葉の意味を大事にしているという。
「子どもも大人も関係なく、人と人がつながる大切さを詩が訴えている。『人類がみな兄弟になる』というところは、楽譜ではアクセントが付き、ベートーベン自身の強い思いを感じる。演奏でもそれを伝えたいので、リハーサルで徹底的にやります」
「特に今の時代は、考えられないほど身近で戦争が起こり、暗たんたるニュースが耳に入ってくる。人種や国境を越えて人がつながるために音楽はあるんだ、と私自身が信じたい思い」と話す背景には、かつての自身の体験がある。

5歳からピアノと作曲を習い、中学3年生で音楽教室主催の海外公演に参加。イスラエルを訪問し、当時の首相イツハク・ラビンと、演奏を通して楽しく交流した。だが、その数日後に暗殺事件が起き、大きな衝撃を受けた。
「世の中の秩序や法律に絶望しました。私は何の力にもならない。でも、音楽で何かできるかもしれない。一生懸けてやっていく意味があるのではないか」と音楽家になる決意をしたという。
今回の第九は、オペラで活躍する実力派歌手4人とプロ歌手による神奈川フィル合唱団40人が参加する。
「同じ人間が生み出すものなので、生活の中にリンクする部分がきっとある。一人一人が生きてきた背景がきらめく瞬間、何かを重ね合わせることもあると思う」とほほ笑む。
クラシックの演奏会に初めて足を運ぶ親子もいるかもしれない。「(事前の勉強など)何かしなきゃいけないとは思わず、その場でしか味わえない空気感の中に飛び込んで、一緒に楽しんでもらいたい」
12月29日に県民ホール(横浜市中区)で行われる「ファンタスティック・ガラコンサート2022」でも神奈川フィルを指揮し、豪華なアーティストらと共演する。「オーケストラ、オペラ、バレエ、とそれぞれにストーリーのある、ものすごく魅力的なプログラムです」
第九公演は12月7日午後7時開演。S席7千円ほか。無料招待は小学生から高校生までの先着300人で、保護者(有料)の同伴が必要。神奈川フィルのオンラインチケットサービス「ブルーダルチケット」で申し込む。問い合わせは神奈川フィル☎045(226)5045。一般の申し込みは神奈川フィル・チケットサービス電話045(226)5107。
2022年10月5日公開 | 2022年10月5日神奈川新聞掲載
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