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坂入健司郎さんに聞く 大注目の新進指揮者、神奈川フィルと初共演

音楽大学出身ではなく、一般の大学卒業後に会社員として働きながら、オーケストラの指揮を務めていた異色の経歴の持ち主。今や、全国のオーケストラの舞台に引っ張りだこの大注目株だ。
指揮に専念するようになったのは昨年からだが、学生時代にオーケストラを立ち上げて指揮をしたり、有名指揮者の教えを乞うたり、と経験は豊富だ。
「どちらかといえば人見知りで、決して誰とでも気軽に話すタイプではない」というが、指揮のためなら積極的になる。中学時代に夏休みの自由研究でインタビューを申し込んだことから世界的指揮者・小林研一郎さんに誘われ、高校から指揮法セミナーに通うようになった。
ロシアの指揮者フェドセーエフさんには、来日公演で手紙を渡そうとしたことをきっかけに「これからは自分のリハーサルは、いつでもどこでも見ていいよ」と言われた。東京やロシア、オーストリアでも見学したという。
「素晴らしい指揮者の方々は何を考えているのか知りたい、願わくば教わりたい、という気持ちだった」と振り返る。

神奈川フィルハーモニー管弦楽団がかながわアートホール(横浜市保土ケ谷区)で行うリハーサルの見学にもよく通い、2007年から音楽監督を務めたシュナイトさんの公演は全て足を運んだ。
「シュナイトの指揮で、ブラームスの交響曲と、ヒンデミットの『画家マティス』を聴いた時、初めて後光が差してくるような、音が上から降ってくるような経験をした。終わっても席を立てないほどの衝撃で、生涯忘れられません」
来年1月の「フレッシュ・コンサート」=写真はチラシ=では同楽団と初共演を果たし、「34年間暮らす神奈川県民としても感慨深く、思い入れもひとしお」と喜ぶ。演奏するのは、会場となる県立音楽堂(同市西区)でかねてより聴きたいと思っていたモーツァルトの生涯最後の交響曲「ジュピター」だ。
「最後の方は、まるでモーツァルトが天国へ駆け抜けていくよう。引き留めることもできない。亡くなったから交響曲を書けなかったのではなく、これが集大成でこれ以上は書けなかったのでは、とも思う。ぜひ生で体感してほしい」

さかいり・けんしろう
指揮者。1988年、川崎市多摩区生まれ。慶応義塾大学経済学部卒業。指揮法を井上道義、小林研一郎、三河正典、山本七雄各氏に、チェロを望月直哉氏に師事。V.フェドセーエフ、井上喜惟各氏に指揮のアドバイスを受ける。2008年「東京ユヴェントス・フィルハーモニー」を結成。15年「かわさき産業親善大使」、16年「川崎室内管弦楽団」音楽監督に就任。
※23年1月9日、県立音楽堂(横浜市西区)での神奈川フィルハーモニー管弦楽団特別演奏会「フレッシュ・コンサート」に出演。一般3千円ほか。問い合わせは神奈川フィル・チケットサービス電話045(226)5107。
記者の一言
「幼稚園の年長の時、誕生日プレゼントにドボルザークの『新世界』のCDをもらったが、複数枚がかぶってしまって。がっかりしたが、聴き比べるとオーケストラや指揮者で違う。その違いが面白くて、指揮者になりたいと思った」というから随分早熟だ。初めての指揮は13歳で、中学校の音楽部のオーケストラ。「自分の頭の中にはこんなに素晴らしい音楽がある。それを表に出すんだ」との思いだったが、「自分勝手な考え」だったという。今は「自分の理想はもちろんずっと追い続けるが、それを120、150%にしてくれる素晴らしい演奏者がいて、自分の予想を軽く超えてくるものが生まれる。その高い次元での素晴らしいコミュニケーションが楽しい。大事なのはオケを信頼すること」と楽しそうだ。
2022年10月11日公開 | 2022年10月09日神奈川新聞掲載
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