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「CLOTH×OVER 糸と布 日常と生を綴る」 新しい美術表現を追求、3人の若手作家を取り上げた展覧会

「縫う」「織る」「刺しゅう」「染め」などの手法を使って新しい美術表現を追求している3人の若手作家を取り上げた展覧会「CLOTH×OVER 糸と布 日常と生を綴(つづ)る」が、横浜市民ギャラリーあざみ野(同市青葉区)で30日まで開催中だ。日常や自然、社会問題などを、糸や布といった身近な素材を用いて作家それぞれの視点で紡いだ15作品が並び、「日常的感覚が豊かに交差する表現の世界」を紹介している。
「あざみ野コンテンポラリー」として現代美術を紹介するシリーズの13回目。糸と布は、人々の生活や地域文化に密着した素材として発展を遂げてきた。同ギャラリーの佐藤直子学芸員は「多様な機能を持つ布は、人が日常的に触れる機会も多く、さまざまな記憶を呼び起こすと同時に、快・不快の感覚にも深く関わっている。3人が表現した作品を通して日常に横たわる出来事について改めて考え、知る機会になれば」と企画の意図を話す。

「生命の循環」をテーマに、織る、染める、編む、刺すといった技法でテキスタイル作品に取り組む小林万里子。薄暗い展示空間には、麻や綿などを組み合わせた素材に、動植物の世界を刺しゅうで色彩豊かに描いた巨大な立体作品が浮かび上がる。新作「4つ目の境界」は、「自己と他者」「人間と動物」「社会と自然」を隔てる境界線を表し、生命の本質的な姿を描き出している。
ユ・ソラは、柔らかい白い布に黒い糸で刺しゅうを施し、日常の風景を記録するような立体・平面作品を手がける。家具や日用品、雑貨などを実物大で再現した部屋のインスタレーション「おやすみ、おはよう」は、作品の空間に入り込むことで「日常の大切さ」を見つめ直すきっかけを与えてくれる。

遠藤薫は、沖縄や東北をはじめ、国内外でその地に根ざした工芸と歴史、生活と密接に関係する政治の関係性を解き明かしながら、主に染織を用いて制作発表を続けてきた。同展では、これまでの作品に繰り返し登場する米軍払い下げのパラシュートを大きなツリーに見立て、戦後の沖縄の基地の中のクリスマスをイメージした空間をつくりだした。終戦直後、米軍が廃棄したコーラ瓶や基地内外の写真といった遠藤が収集した戦争遺品なども並び、沖縄と米軍基地について考える機会にもなっている。
入場無料。24日休館。22日は午後2時からユ・ソラを講師にしたワークショップ、23日は同2時から担当学芸員によるギャラリートークが行われる。詳細・申し込みはホームページで。問い合わせは同ギャラリー電話045(910)5656。
2022年10月20日公開 | 2022年10月20日神奈川新聞掲載
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