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神奈川フィルがゆめコンサート 「すごい」と感動、泣き出す児童も

地域に密着した音楽文化の創造を使命として掲げる神奈川フィルハーモニー管弦楽団(神奈川フィル)。2005年から、県内各地の小学校を訪問する「子どもたちの音楽芸術体験事業(ゆめコンサート)」を県との共催で実施している。この3年ほどはコロナ禍で開催にも制約があるが、子どもたちが音楽に触れる機会をもっと増やしたいと取り組みを進めている。
同事業には、子どもたちにオーケストラの生演奏を届け、質の高い音楽経験を通して音楽への興味と理解を深め、豊かな感性を育んでもらう狙いがある。
今年9月には、三つの小学校を訪問し、体育館で公演を行った。
海老名市立上星(じょうせい)小学校では、5、6年生約220人が参加。ロッシーニの「ウィリアム・テル」やビゼーの「カルメン」といった活気ある曲が目の前で迫力いっぱいに演奏されると、オーケストラを食い入るように見つめたり、体を揺らしたりして聴き入る子どもたちの姿があった。内緒にされていたオーケストラ用に編曲された校歌が最後に披露されると、「すごい」と感動して泣き出す児童もいた。
公演に先立ち、7月に楽団員と指揮者、ピアニストが同校でワークショップを行い、手をたたいたり、足踏みをしたり、と体を使ったボディーパーカッションを指導。公演当日はチャイコフスキーのバレエ組曲「くるみ割り人形」の「トレパーク」に合わせたボディーパーカッションで、児童たちがオーケストラと一緒に演奏を楽しんだ。
同校の音楽教諭は「子どもたちがいい表情をしていた。生の演奏をこんなに近くで聴いてもらえてうれしい」と話した。
同事業は、コロナ禍により20年度は実施できず、21年度はワークショップだけ行った。以前は校歌を合唱して盛り上がったが、今は聴くだけなどの制約もある。
指揮者の阿部未来は「歌うな、話すな、と子どもたちが一番苦労している。そのストレスは大人より大きいと思う。コンサートも行かないようにしている家庭もあるだろう。心に届くというとおこがましいが、この機会に生の演奏を楽しんでほしい」と話す。
阿部は15年から19年まで神奈川フィルの副指揮者を務め、ゆめコンサートにも関わってきた。
「一緒に音楽を創り上げることを体験し、一体感や達成感が生まれる。自分自身を振り返っても、小中学校でのこうした経験はその場の空気感など何かしら残っている。生活の中での音楽は重要だ」と力を込める。
神奈川フィルは、特別支援学校や医療機関を訪問する「学校等出張コンサート(ボランティア公演)」にも取り組んでいる。さらに多くの子どもたちに音楽体験の機会を届けたいと、10月からその費用に充てるクラウドファンディングを開始した。目標金額は1千万円で、11月30日まで。お礼として、地元企業の協力を受けた県内の特産品と公演チケットをセットにしたコースや、指揮者などの体験コースを用意している。問い合わせは神奈川フィル電話045(226)5045(平日午前11時~午後5時)。

2022年10月26日公開 | 2022年10月26日神奈川新聞掲載
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