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　日本でも大人気のミュージカル「キャッツ」。ブロードウェーでのロングラン公演は終わり、２０１９年から全米各地やカナダを巡回するツアー公演が行われている。そのツアーに昨年からキーボード奏者として参加しているピアニストの松浦麻未（２９）は、横浜市保土ケ谷区出身。「いつかブロードウェーで演奏したい」との夢を抱いている。

　ミュージカル好きの母親に連れられて、幼い頃から多くの舞台を見てきたという松浦。「映画と違って、その場で役者が演じてくれて、ライブでしか味わえないエネルギーにあふれている」とミュージカルの魅力を語る。

　初めて見たのは東京・帝国劇場での「レ・ミゼラブル」。幕あいにオーケストラピットを見に行き、演奏者に関心を持ったという。５歳からピアノを習っており、高校生になるとミュージカルの舞台で演奏することが夢になった。だが、調べると大々的な募集を行うわけではなく、「そこにたどり着くのは難しい」状況だと分かった。

　桐朋学園大４年の時、ジャズピアニストの山中千尋の授業を受けてジャズピアノに興味を持ち、奨学金を得て米国のバークリー音楽大に留学。チャンスはそこで訪れた。手を負傷した友人から、ミュージカル公演の演奏の代役を頼まれたのだ。その経験が「キャッツ」のオーディションにつながり、念願の仕事に就くことになった。

　同舞台は、ドラム、ギター、ベース、木管楽器、キーボードの計８人と、指揮者１人で生演奏する。キーボードは３人で、ピアノの他に、弦楽器や金管楽器、効果音などの音色も奏でる。「どうやったら歌が映えるのかを考えながら弾いています。歌い手と合わせて弾くのが好きです」とほほえむ。

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　ツアー中は月曜が移動日で、火曜から金曜が夜公演、週末は昼と夜の２公演をこなす。自宅のあるニューヨークにはほとんど帰れない。コロナ禍で週３回の抗原検査は欠かせないが、最近ではエンターテインメント業界が以前と同じように稼働しており、コロナの弊害はほとんど感じなくなったという。

　「去年は女性奏者は私だけでしたが、今年のツアーでは２人になりました。米国人ではないのは私を含めて２人ですが、このカンパニーで人種差別に遭ったことはないです」
　
　以前は白人男性の割合が高かったという米ミュージカル業界だが、「子育て中の女性もいて働きやすい。ベビーシッターの利用はごく普通で、サポートが整っている。私もずっと働き続けたい」といい、同業界で音楽制作に携わる女性らを支援する団体「ＭＡＥＳＴＲＡ」の活動にも参加している。

　今月７日、自身の音楽活動も深めたいとピアノ、ベース、ドラムから成るピアノトリオで自作の曲を配信リリースした。タイトルは「Ｓｔａｒｒｙ　Ｈｅａｖｅｎｓ」。直訳すると「満点の星空」で、「聴いた時に前向きになれるよう」と明るい音をちりばめた。

　「いつかはブロードウェーの舞台で演奏したい。ブロードウェーは、いろんなところからここを目指して人が集まってくるので、やはりエネルギーが違う。指揮にも挑戦したいです」

2022年11月9日公開　｜　2022年11月9日神奈川新聞掲載

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