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気になる まちを耕す本屋さん
横浜市南区の「本屋 象の旅」 本とじっくり向き合う場所に

開業にあたっては大船の「ポルベニールブックストア」店主らに助言をもらった。「個人で本屋を営む先輩たちに感謝しています」=本屋 象の旅(横浜市南区)
開業にあたっては大船の「ポルベニールブックストア」店主らに助言をもらった。「個人で本屋を営む先輩たちに感謝しています」=本屋 象の旅(横浜市南区)

 新刊書店「本屋 象の旅」が1日、横浜橋商店街(横浜市南区)近くの住宅街に開店した。

 以前は鮮魚店だったという店舗は、正面がガラス張りで道行く人の視線を集める。買い物袋をぶら下げた高齢者や子どもの手を引いた若い母親が店内をのぞくなど、住宅街に新しい光景が生まれている。

 街の雰囲気が気に入り、出店を決めたという店主の加茂和弘さんは「商店街の店のように、地元の人に普段使いしてもらえる店になれたら」と静かにほほ笑む。


 加茂さんは自分の店を持つことを目指しながら、不動産関係の仕事に就いていた。3年前に退職し、本も扱う飲食店の開業を準備していたが、新型コロナウイルスの感染拡大で計画を変更。“本好き”という原点に立ち返り、本屋の開店を決意した。

 「薄利で経営は厳しいことは分かっていたが、好きなもののためなら努力できると思った。紙の本には価値があると確信しているし、生活の中には知らない本に出合う場所が必要だと思うんです」


真新しい木製の本棚の香りがすがすがしい店内。今後は「子どもや孫に絵本を贈りたい」という地元客の声に応えたいという
真新しい木製の本棚の香りがすがすがしい店内。今後は「子どもや孫に絵本を贈りたい」という地元客の声に応えたいという

 店内に並ぶ約3200冊の本は「自分がいいと思った本や、信頼している人がすすめている本」。作家やジャンルではなく、「料理・食」「旅行」「ジェンダー」「人種差別」などテーマに沿って本を並べるほか、安野光雅の絵本など、長い間読み継がれている書籍もそろえた。

 「仕入れの問題で雑誌や最新の本は扱いが難しいし、小さい店内なので点数は限られますが、今の世界のありようを雄弁に語ってくれる本を置いています」

 目を引く店名はポルトガルのノーベル文学賞作家、ジョゼ・サラマーゴの「象の旅」(書肆侃侃房、2200円)に由来。ポルトガル国王からオーストリア大公に贈呈されることになった象と象遣いの物語だが、そこで描かれるのは人間の温かさや愚かさだ。

 「今の時代に感じるはがゆさを代弁してくれているように思えた。人生のままならなさを描いた小説が好きなんです」

 「店の個性を出していくのはこれから」としながら、そのまなざしは地域の人々を見つめている。12月からはシェア型本屋制度をスタート予定で、近くに住む読書家らがオーナーに立候補しているという。

 近隣の映画館「横浜シネマ・ジャック&ベティ」の上映作品に沿うテーマの本を交流サイト(SNS)で紹介する試みも始めた。「来店してくれる地元のみなさんからは応援の気持ちを感じるし、生活圏に本屋があれば本を読みたいという人は多いと実感している。じっくり本と向き合える時間を提供したいですね」

 本屋 象の旅:横浜市南区浦舟町1の1の39。火曜定休。午前10時~午後7時。電話045(315)7006

2022年11月29日公開 | 2022年11月28日神奈川新聞掲載

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