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文化部員の体験記
ファン垂涎のビンテージがずらり 「スカジャン展」に行ってみた
- 横須賀美術館(横須賀市)

ファッションアイテムとして人気を誇る「スカジャン」の魅力に迫った「PRIDE OF YOKOSUKA スカジャン展」が、で開かれている。多彩なデザインや色、高度な刺しゅうの技術を通して、従来のイメージを超えたスカジャンの奥深さに触れることができる。
松の木に乗ったワシ、豪快に口を開いた虎、富士山を背景に東洋の雰囲気を放つ竜─。会場に一歩足を踏み入れると、存在感あふれる図柄に彩られたビンテージもののスカジャンがずらりと目に入る。
「3大モチーフといわれるワシ、虎、竜が特に人気の柄なんです」。スカジャンを長く手がけてきた衣料メーカー、東洋エンタープライズ(東京)企画担当の松山達朗さん(53)はそう話す。

米国風のジャケットに日本の刺しゅうが融合したスカジャンは敗戦直後、占領軍向けの土産物として誕生した。物資が不足していた戦後の混乱期。米軍基地周辺では米兵相手の商売が繁盛し、露店が多く並ぶように。松山さんによると、着物や帯、ひな人形など日本の伝統的な品々を買い求める米兵でにぎわったという。
この過程で、米国人になじみがあるベースボールジャンパーと豪華な刺しゅうを組み合わせた「スーベニアジャケット」が生み出され、連日飛ぶように売れた。
ジャケットは1970年代ごろから「横須賀ジャンパー」、略して「スカジャン」として定着。継続して販売していた横須賀基地前の繁華街「どぶ板通り」のイメージと結び付いたことからこの名が付いたという。

東洋エンタープライズの前身で米軍施設に商品を納入していた「港商商会」がジャケットを手がけていた縁で、今展では同社のスカジャンブランド「テーラー東洋」の約140着をメインに紹介している。
見どころは、60年代初頭までに製造されたビンテージもの。熟練職人の手によって生まれる刺しゅうの独特の立体感と光沢、美しい色合いが目を引く。図柄も3大モチーフをはじめ日本の風景やヒョウなどの動物、どくろなどバリエーション豊かだ。
「生地の色やリブのラインの入り方など多種多様。美しい見た目から、新たなスカジャン像に触れられると思います」と同社広報担当の川島尚さん(45)が言うように、スカジャンになじみが薄い人もお気に入りの1着に出合えそうだ。

貴重なスカジャンに加え、戦後のどぶ板通りの様子や基地文化の一端を学べる写真や資料、刺しゅうの基礎となる型なども展示している。
初日は600人超が来館するなど注目度も高く、松山さん、川島さんともに「美術館に飾られることでスカジャンの芸術性が評価されてうれしい。なかなか目にすることができないビンテージものを通して、スカジャンの魅力を広めたい」と話す。
企画を担当する同館学芸員の栗林陵さん(43)は「あまり美術館になじみがない人も来館してくれている。どぶ板通りにはスカジャンを扱う店が多い。展示を見た後にぜひ足を運んでほしい」と呼びかける。
「PRIDE OF YOKOSUKA スカジャン展」
25日まで。5日休館。観覧料は一般1300円ほか(スカジャン着用で割引)。会期中、同館からどぶ板通りへの路線バス乗車券付き観覧券を館内で販売するほか、連携企画も行っている。問い合わせは同館、電話046(845)1211。
2022年12月5日公開 | 2022年12月4日神奈川新聞掲載
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