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映画「戦地で生まれた奇跡のレバノンワイン」 ワインメーカーたちが語る幸福と生き方論

17日から横浜シネマリンで上映。
古代フェニキア文明が栄えたレバノンは、世界最古のワイン生産地の一つだ。同国南部では2500年以上前のワイナリーの遺跡が発見されているが、紛争や内戦が続き、発掘調査は命の危険と隣り合わせだ─という考古学者たちの言葉で映画は始まる。
過酷な状況の中でも、ワイン醸造所の人々は地道にワインを造り続けてきた。今作は、内戦中にワイン造りを始めた修道院の神父や、虐殺が起こった故郷の村で村の再起のためにワイナリーを続ける夫婦など、11のワイナリーの人々がその信念を語る言葉を中心に構成したドキュメンタリーだ。
シリア、イスラエルと国境を接しており、宗教的対立などから度重なる軍事衝突が繰り返されてきたレバノン。ドローンからの爆撃を避けつつ、トラックでワイナリーにブドウを運ぶ実際の映像には言葉を失ってしまうが「毎日を前向きに生きよう」と丁寧なワイン造りを続ける人々の表情はしたたかでたくましい。
中でも1975年から90年の内戦下でワインを造って輸出し、レバノンワインの名を高めたセルジュ・ホシャールの言葉「ワインは人の心を通わせるし、心が通えば平和になる」という言葉には、ひょうひょうとした姿の奥にある、戦争への怒りが感じられる。くじけずワイン造りを続けること自体が、彼らにとっての反戦活動なのかもしれない。
監督/マーク・ジョンストン、マーク・ライアン
製作/米国、1時間35分
2022年12月16日公開 | 2022年12月16日神奈川新聞掲載
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