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刺しゅう
針と糸でつむぐ独自の表現 沖潤子、鎌倉で個展「さらけでるもの」
- 県立近代美術館鎌倉別館(鎌倉市)

刺しゅうを使った作品を手がける鎌倉市在住のアーティスト沖潤子の個展「沖潤子 さらけでるもの」が、県立近代美術館鎌倉別館(鎌倉市)で開かれている。
衣類やバッグなど既製品に刺しゅうを施した初期の作品から、絵画や彫刻などの領域を超えた最新作まで約80点を展示。刺しゅうの概念を超えた表現を続ける作家の全貌を見ることができる。
母が残した布や糸をきっかけに2002年から独学で刺しゅうを始めた沖。「母の死を機に自分の心と向き合い、進む道が明確になった」と振り返る。
さらに幼かった娘から誕生日に手提げ袋を贈られ、「母の遺品の大事な布を大胆に切り、無邪気に刺しゅうしたバッグを見て、自分が求めていた表現が見えた」ことも作家活動の契機になったという。
制作時は下絵を描かず、思うままに針を運ぶ。糸の絡まりや引きつれ、ほつれも表現の形として進め、緻密な針目が布をはい回るように、抽象的なモチーフや直線を描く。

古い布との出合いから生まれた初期の作品「祈り」(09年)は、十字架のような形を運針で描き、古い木枠を額縁にした。素材となる「もの」が歩んできた歴史に寄り添うように一針一針、布に糸をくぐらせ時間を重ねる。「それらと混ざり合うために無心で針目を進める」という。
立体的な作品も手がける。打ち上げ花火の火薬を詰める容器「玉皮(たまがわ)」を使った「初恋」(15年)は、球体の容器に沿って白布を何枚も縫い合わせ、同色の糸で繊細な模様を刺しゅうした。
同展の英語タイトルと同名の最新作「exposed」(22年)は、鮮やかな黄色の布に厚く細かい縫い目が際立つ。沖は「言葉を探すように針目を追いかけている。これからも紡いでいきたい」と力を込める。
1月9日まで。月曜と12月29日~1月3日休館。午前9時半~午後5時。一般700円ほか。問い合わせは同館、電話0467(22)5000。
2022年12月19日公開 | 2022年12月19日神奈川新聞掲載
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