気になる
まちを耕す本屋さん
横浜市神奈川区のブックカフェ「喫茶と本とちょっと酒『はるや』」 残り97%が対象の「いいかげんな店」

東急東横線白楽駅東口から徒歩2分、小さなビルの2階にある「喫茶と本とちょっと酒『はるや』」(横浜市神奈川区)は約300冊の新刊本を扱うブックカフェだ。千冊は収容できるという本棚にあえて余裕を持たせ、多くの本が正面を向くように配置。色とりどりの表紙と手書きのポップに引かれ、つい手に取りたくなる。「あまり本に縁がない人がコーヒーを飲みに来て、うっかり本を買うことをねらっているんです」と店主の小檜山想さんは笑う。
ライターや編集者として働いていた小檜山さんは、ライター仲間の草野史さんと2011年から都内で小さなバーを経営。今年6月に白楽に移転してきた。「以前の店では常連さんと濃いコミュニケーションをしていたのですが、夜遅い仕事が体にこたえるようになった。ブックカフェならお客さんに自発的に本を読んでもらえるから楽かなと考えたんです」。自分たちが読んできた古本も約600冊ほど置くほか、シェア型本屋制度も導入。私物の本と、別の客が置いていった本を交換できる「物々交換コーナー」の仕組みも楽しい。
白楽からは、電車ですぐに横浜駅やみなとみらいの大型書店にアクセスできる。「隣駅の妙蓮寺には老舗の石堂書店や素晴らしい選書の本屋・生活綴方(つづりかた)もある。この店は、普段本屋に行かない人が本に触れるきっかけになれれば」と小檜山さん。日常的に本屋に通う人は全人口の3%という調査結果があるといい、「残りの97%を対象にした店にしたいんです」と話す。

文芸や人文書、スポーツや自然科学などの本は、いずれも「すでに誰かが評価していて、自分たちも読みたい本」。最新の本にはこだわらない。最近は、1980~90年代に活躍した漫画家・岡崎京子さんの「pink」(マガジンハウス、1257円)が20代に売れているという。雑誌連載時に小檜山さんが担当編集者を務めた思い入れの深い作品でもある。今後、当時の若者カルチャーを描いた書籍を増やす予定だ。
力士が登場する藤岡拓太郎さんの絵本「たぷの里」(ナナロク社、1320円)も印象深い1冊。本をほとんど読まないという若者が買ったという。「購入したのは『最近太ったから』という理由でしたが、本に興味をもってもらえてうれしい」と小檜山さん。草野さんも「イカやタコを食べるのが好きだから、海の生き物の本を手に取ってみる、といったきっかけを作れたら」と話す。
「本屋は敷居が高いもの、と感じてほしくない。いいかげんな店なんです」と笑顔で語る2人。「本は読まなくても生きていける。でも筋肉トレーニングみたいに知性が鍛えられるし、損することはないよと伝えたいですね」
はるや:横浜市神奈川区白楽103 松尾白楽第2ビル2F。水曜定休。平日は正午~午後9時。土日・祝日は午前11時~午後8時。問い合わせはツイッターなどから
2022年12月29日公開 | 2022年12月22日神奈川新聞掲載
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