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気になる 宮沢氷魚と共演
映画「エゴイスト」でゲイ役 主演の鈴木亮平「差別残る社会の側に問題」

「人によって異なる感想が生まれる作品。何を感じ、どんな発見があったか、ぜひ聞いてみたい」と語る鈴木亮平(撮影・立石祐志)
「人によって異なる感想が生まれる作品。何を感じ、どんな発見があったか、ぜひ聞いてみたい」と語る鈴木亮平(撮影・立石祐志)

 エッセイスト高山真の自伝的小説を原作にした映画「エゴイスト」(松永大司監督)が、10日からT・ジョイ横浜などで上映される。男性同士の恋愛を描くと同時に、深い信頼で結ばれた親子の物語でもある。主演の鈴木亮平は「愛とエゴの境界」を丹念に探りながら、本作と向き合った。

 鈴木が演じたのは14歳の頃に母を失った青年、浩輔。育った田舎町ではゲイである自分を押し隠し、鬱屈うっくつした思春期を過ごした。18歳で上京、ファッション誌の編集者として働く中でパーソナルトレーナーの龍太(宮沢氷魚)と出会う。ほどなく引かれ合い、幸せな時を共有する2人だったが、ある日を境に歯車が狂う。


© 2023 高山真・小学館/「エゴイスト」製作委員会
© 2023 高山真・小学館/「エゴイスト」製作委員会

 浩輔には、2020年に他界した原作者の高山自身が投影されているように見える。「彼の人生を象徴する作品になるかもしれない」と緊張の面持ちで語る鈴木は当初、浩輔を演じることへの逡巡(しゅんじゅん)があったという。

 「僕が想像のみで演じることで、ゲイに対する偏見やステレオタイプが世に広まってはいけないと思った。当事者ではない自分に演じる資格があるのだろうかとすごく悩んだんです」


© 2023 高山真・小学館/「エゴイスト」製作委員会
© 2023 高山真・小学館/「エゴイスト」製作委員会

 その葛藤は後に和らいだ。脚本段階から性的マイノリティーに関するせりふや所作、「インティマシーシーン」と呼ばれる性的描写のある場面の動きについて監修が入ることや、浩輔の友人役にゲイ当事者が配役されることが分かったからだ。

 「この体制なら挑戦できると思えた。ゲイコミュニティーにきちんと届けられる作品として成立させることを目標にしました」

 「オカマ」と絶えず侮蔑された浩輔は、命を絶つ選択が頭をかすめたこともある。やがて憎むほど嫌った故郷を離れ、東京で尊厳を取り戻す。繊細で力強い。そんな浩輔の多面性を、鈴木は抑制の効いた演技で体現した。「着実に自分の力で居場所をつかんだ人。悲劇の主人公ではない。彼を意志のある人として描きたかった」と明かす。


© 2023 高山真・小学館/「エゴイスト」製作委員会
© 2023 高山真・小学館/「エゴイスト」製作委員会

 一方、恋人の龍太はひとり親である母を苦労して支えている。亡き母を思慕する浩輔は、龍太を心から愛しつつ、彼の母を共にサポートすることで気持ちが満たされていく。この振る舞いは果たして利己的なのか。浩輔が繰り返した問いを、鈴木自身も心に留めて撮影に臨んだ。

 「愛とエゴの境界って何だろう。僕はそこがこの映画の最たるテーマだと思うんです」。負の感情を含めた人間の内面を深くのぞき込む作品でもある。「見終わった後は『エゴイスト』という言葉が、全く違う意味で響くはずです」


© 2023 高山真・小学館/「エゴイスト」製作委員会
© 2023 高山真・小学館/「エゴイスト」製作委員会

 かつての浩輔のように、今この瞬間も、人知れず偏見と差別に耐え忍ぶ性的マイノリティーの人たちがいる。鈴木はその事実から目をそらさない。

 「彼らではなく、差別が根強く残る社会の側に問題がある。この映画をはじめ、自分の性の在り方が当然のものだと感じられる作品が増えていくべきだし、性的マイノリティーの役を当事者が演じる機会ももっと増えていくべきだと思っています」

 「高山さんに恥じない作品」を目指したという鈴木。作者への敬意と少数者に対する真摯(しんし)なまなざしが、スクリーンからにじみ出る本作の誠実さと重なった。

記者の一言
映画の主題や配役の人物像のみならず、性的マイノリティーの置かれた現状にも話が及んだ昨年12月のインタビュー。同性婚の法制化について、鈴木さんは「当事者の生きやすさや尊厳を守ることにつながる」と賛同した。「これは人権の問題」と前置きした上で、「『あなたたちは当たり前の存在だ』と国が法的に明言することで、社会の意識は変わっていく。反対意見も注意深く読んだ上で、それでも、法整備がなされるべきだと確信した」と語った。ためらいのない、力強い言葉だった。ただ演じるのではなく、むしろ同性愛者を演じるからこそ、性的マイノリティーが直面する問題に主体的に向き合い、自らの言葉で語る誠実さがそこにあった。今月上旬、岸田文雄首相は同性婚の法制化について「社会が変わってしまう」と否定的見解を示した。首相秘書官の荒井勝喜氏は「隣に住んでいたら嫌だ」「見るのも嫌だ」など性的マイノリティーに対する差別発言を行い、更迭された。当事者は今この瞬間も共に生きている。きっと誰もがすれ違っている。映画「エゴイスト」は、俳優・鈴木亮平は、そのことも当たり前に教えてくれる。

2023年2月9日公開 | 2023年2月10日神奈川新聞掲載

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