気になる 芥川賞作家・津村記久子、中古のスマホを何台も購入するわけ
- 青葉区役所(横浜市青葉区)

芥川賞作家・津村記久子のトークイベントが11日、青葉区役所(横浜市青葉区)で開かれた。「君は永遠にそいつらより若い」や「この世にたやすい仕事はない」などのヒット作を手がけた津村が、「書くこと、考えること」をテーマに、執筆の裏側や普段の読書について語った。同区役所と横浜市山内図書館の主催。
イベントには、会場とオンラインを合わせて約190人が参加。津村が図書館職員や参加者の問いかけに答える形で進行した。
昨年テレビドラマ化された「つまらない住宅地のすべての家」について質問を受けると、「登場人物の背景を深掘りしてくれていて、脚本を読んでいて面白かった」と笑顔。とある住宅地に、刑務所を脱走した女が向かっているという物語の着想については「『現在、逃亡犯が逃げている』というテレビの速報を見て心に強く残っていた」と解説した。「犯人の進路にある町の人々は怖いと思うだろうが、つらい事情を抱えている人は『連れて行ってくれないだろうか』と思うかもしれない。家族や友人とは共有できなくても、自分の心に強烈なひっかかりがあったものが物語になっていくことが多い」と創作の背景を語った。
ユニークな視点から生み出される津村の作品にはファンも多い。物語の種になるものを得るため、日常の気づきを常にメモしているという。手書きのノートも使用するが、中古のスマートフォンを何台も購入してメモを残すことだけに使っているという驚きのエピソードも明かされた。カフカの「城」やフィッツジェラルドの「華麗なるギャツビー」など92冊の名作を独自の語り口で紹介した「やりなおし世界文学」も、作品を読みながらメモに残した所感をまとめて原稿に仕上げたという。
普段は翻訳された作品もよく読んでおり、2022年は調査報道ユニット「ベリングキャット」を追ったノンフィクション「ベリングキャット デジタルハンター、国家の噓(うそ)を暴く」が面白かった、と紹介。同著の翻訳者・安原和見の本をよく読むといい「さまざまなジャンルの作品を手がける翻訳者の本を追っていると、新鮮な本との出合いがある」と読書の幅を広げるポイントについても語った。
2023年2月27日公開 | 2023年2月27日神奈川新聞掲載
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