気になる 横浜美術館の仮囲い彩る横浜の風景 現代美術家・浦川大志が連作
- 横浜美術館(横浜市西区)

休館中の横浜美術館(横浜市西区)の工事用仮囲いを利用し、若手アーティストを紹介する企画「Wall Project」の第2弾が開かれている。今回の展示は、福岡県を拠点に活動する現代美術家・浦川大志(28)による「掲示:智能手机(スマートフォン)ヨリ横浜仮囲之図」。同館や横浜中華街など横浜ゆかりのモチーフを断片的に描いた5点の連作が白い仮囲いを彩っている。
企画は、同館が2007年から行っている期待の若手アーティストを紹介する取り組みの一環として実施している。浦川の展示は仮囲いに向かって左から順に、横浜の街を上空から捉えた「雲と海」、横浜美術館が浮かび上がるように描かれた「窓と壁」、横浜中華街の門を主役にした「中華風」が並ぶ。

続く「仮囲い」は、同館が所蔵する歌川広重(三代)「横浜波止場より海岸通異人館之真図」からインスピレーションを得たもの。同図に描かれた米国船を指さす2人を画面上に登場させ、広重作品へのオマージュを込めた。そこから、魚などが暮らす水中へと続く「小龙虾(ザリガニ)」とつながる。長さ約50メートルにわたり、いずれもグラデーションの線と鮮やかな色面で表現されている。
浦川は13年に九州産業大学を卒業後、風景を参照した抽象画の制作を開始。近年はインターネット上の画像やデジタル的な筆致を特徴にした絵画を手がけている。制作方法は独特で、スマートフォンの画像検索や交流サイト(SNS)などを使って集めた画像やイラストと、自身が撮影した写真をコラージュさせ、アクリル絵の具と筆で描いている。

今作は、多くの人が行き交う野外の展示環境に負けないようモチーフや色味を工夫。これまで以上にカラフルに仕上げたという。「街中にどうやってなじませるかを考えた。SNS映えもかなり意識した」。その言葉通り、画面上にQRコードを描くなど新たな試みにも挑戦している。また、一風変わった展覧会タイトルは、ネット検索中に「横浜─」を偶然見つけたことに由来する。15年には同市中区で開かれているアートフェスティバル「黄金町バザール」に参加するなど横浜とは縁もあった浦川。「学生時代にできなかったことを今作では表現、昇華できた」と振り返る。
担当学芸員は「QRコードは読み取れるもの読み取れないものを合わせ、11カ所描かれている。作家から鑑賞者へ向けられたメッセージが読み取れ、“見る”という行為に意識を向ける作品です」と解説。「作品を真正面から捉えるというよりは、スマホの画面越しから見て楽しんでほしい」と、呼びかける。
浦川の作品は5月31日まで公開予定。問い合わせは同館、電話045(221)0300。
2023年3月1日公開 | 2023年2月27日神奈川新聞掲載
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