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国際女性デー
中脇初枝さん再話、女性が人生切り開く18話 「世界の女の子の昔話」刊行

世界各地に伝わる女性が主人公の昔話を集めた「世界の女の子の昔話」(偕成社、1540円)が、8日の国際女性デーに合わせて刊行される。長年にわたり昔話を研究してきた作家の中脇初枝さん=県内在住=が再話を担当。主体的に生きる主人公の姿を通して「バラエティー豊かな昔話の魅力に触れてほしい」と話す。
桃太郎、浦島太郎、花咲かじいさん─。広く知られる日本の昔話には男の子やおじいさんが主人公のものが圧倒的に多いが、「女性が自ら活躍する話も国内外で語り継がれてきた」と中脇さんは指摘する。埋もれがちな女性の話を子どもたちに伝えようと、本書を企画した。
南米や欧州、アジアなど各地で親しまれている18話を収録。「女性が自分の意志と力で人生を切り開く話を意識的に選びました」
例えば中米ハイチの昔話「わたしがテピンギー」では、召し使いにされそうになった女の子が機転を利かせ、友だちの協力を得ながらピンチを切り抜ける。「『女の敵は女』という言葉があるように女性は足を引っ張り合うとみられがちですが、このように女の子同士で支え合う昔話も少なくない。最後まで自分を失わずに生き延びる主人公の姿がとても魅力的なお話です」
他にも、悪知恵を働かせて幸せをつかむ怠け者、悪者に立ち向かうおばあさん、小さな体で試練を乗り越える「こゆびひめ」、自身を追放した父をやり込める王女、賢さと勇気で危機を脱する女の子など、主体的で生き生きとした幅広い世代の主人公がそろう。

「多様な女性が登場する話を読む機会がなく、不思議に思っていた」と子ども時代を振り返る中脇さん。女性が中心の話はシンデレラや白雪姫のように、困難が降りかかってもじっと我慢し、最後は王子に幸せにしてもらうといった受け身の女性の登場人物が主流だった。
「女性が周縁の存在として描かれるものが数多く出版されてきた。さまざまな意思決定の場で男性中心だったことが、その一因と考えられます」
女性はこうあるべきだといった性別に基づく抑圧が今も根強く残るからこそ、多様な女性のありようを映す本書を世に届ける意義は大きい。
「堂々と自分らしく生きる女性の話が人から人へと語り継がれたのは、こうした生き方が昔から認められていた証し。もしくは、そういう姿に希望を持って語った人たちがいた表れでもある」と中脇さん。「こんな生き方もあるんだと、今の私たちをも励ます力を持っています」
2012年に女性が主人公の日本の昔話を収めた「女の子の昔話」を同社から出版。読者の要望もあり、11年の歳月をかけて今回の世界版を編集した。原典を基に再話する際、耳で聞いて心地よい文章になるよう心がけたという本書は、小学生にも読みやすい筆致でつづられている。
「お気に入りの一話を選びながら読んでもらえたら」と願う中脇さんは「性別を問わず、こんな女性の昔話があったのかと新たな発見を得るきっかけにしてほしい」と言葉をつないだ。
2023年3月8日公開 | 2023年3月7日神奈川新聞掲載
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