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「心に、ろうそくの炎のような温かさを」 ピアニスト・牛田智大、横須賀でリサイタル
- 横須賀芸術劇場(横須賀市)

クラシックの日本人ピアニストとして最年少の12歳でCDデビューを果たし、既に10年以上のキャリアを持つ牛田智大(ともはる)(23)。「10代からの憧れだった」というシューマンやブラームスら、ドイツを中心とした作曲家の作品と真摯(しんし)に向き合うリサイタルが、21日に横須賀芸術劇場(横須賀市)で行われる。
同劇場では初めての舞台。牛田は「故野島稔先生の名を冠した素晴らしいコンクールが開催されていることでも以前から注目していた。自分がその舞台に立つことがかない、夢のようです」と喜びを語る。
横須賀を訪れるのも初めて。「海を見るのがとても好きなのですが、観音崎公園からの眺望が非常に素晴らしいと聞いたので、立ち寄ることができたらいいなと思っています」
2021年はショパン国際ピアノコンクールに挑戦。ショパンだけを演奏するリサイタルやライブ録音をリリースするなど、近年はこの作曲家とじっくり向き合ってきた。「ショパンの作品に集中して取り組めたことは、何にも増して素晴らしい経験だった。彼の作品は技術的にも音楽的にもピアニストに多くを求めますが、その分だけ成長させてくれます」
ショパンの残した楽譜は「とても精巧なもので、それぞれの音が存在するべき“場所”が正確に決められている」と指摘する。「そこから少しでも外れれば、彼の音楽が持つ美しさや品格は簡単に損なわれてしまう。これは古典派のモーツァルトやシューベルトにも共通する厄介な難しさ」で、不勉強のまま奇をてらうと作品のあるべき姿から離れていってしまうという。
「いわゆる独自性のようなものを打ち出すことは非常に難しい。10代の頃はその難しさをひたすら追うことだけで精いっぱいでしたが、楽譜の指示を全て演奏に反映させた上で、自由さや遊び心を含ませることは大いに可能だと感じられるようになりました」と自身の成長を感じている。
今回のリサイタルではショパンを離れ、シューマンやブラームスを演目に選んだ。「ドイツ語圏の音楽作品に取り組むことは10代からの憧れだった。また、これまで取り組んでいたショパンの作品は悲劇的で重いテーマを持ったものが多かったので、次のシーズンはより若々しい前向きなエネルギーに満ちた作品に取り組みたいと思いました」と明かす。
特にメインとなるシューマンの「ピアノ・ソナタ第1番」と、ブラームスの「ピアノ・ソナタ第3番」は、作曲家が20代前半に手がけた作品で「年齢が近い自分が演奏することで特別な意味を持たせることができたら」と意欲を示す。
ドイツのピアノ作品の多くは「自分自身との対話に浸るような内向きな要素が強く感じられる」という。「華やかさはそれほど多くないかもしれませんが、穏やかでゆったりとしたノスタルジックな雰囲気があり、聴き手の心にまるでろうそくの炎のようなほんのりとした温かさをもたらすことができる音楽だと感じています。本番でお客さまと共有することが、今から楽しみです」
「牛田智大ピアノ・リサイタル」は午後3時開演。S席4500円ほか。問い合わせは同劇場、電話046(823)9999。
2023年3月12日公開 | 2023年3月10日神奈川新聞掲載
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