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　１７日からｋｉｎｏ　ｃｉｎｅｍａ横浜みなとみらいなどで上映。

　前作「ファーザー」で、認知症が進む男性の混乱を描いたフロリアン・ゼレール監督。最新作では、うつ病を患う思春期の少年と親の苦悩に光を当てた。ままならない家族のありようが、ずっしりと胸に迫る。

　弁護士のピーター（ヒュー・ジャックマン＝写真右）は、妻と生まれたばかりの子どもと幸せな日々を送っていた。だがある日、前妻のケイト（ローラ・ダーン＝同中央）と住む１７歳の息子ニコラス（ゼン・マクグラス＝同左）が、父のもとで暮らしたいと懇願。ピーターは戸惑いながらも、再婚後の家族の輪に彼を迎え入れる。

　不安定な精神状態だったニコラスは、父との生活で明るさを取り戻したかのように見えたが、転校先の高校に通っていないことが発覚。お前の気持ちが分からない。なぜ人生に向き合わない─。うまく言葉にできないニコラスに、いら立ちをぶつける父。激しい言い争いの末、息子はある行動に出る。

　息子を気にかけつつ、丹念にその声を聞こうとしない父の傲慢（ごうまん）さが見ていてつらい。だが彼もまた、居丈高な自分の父親に心を開けず生きてきた。立ち上る負の連鎖が重く突き刺さる。

　家族なら分かり合える。これが幻想に過ぎないことを示しながら、親子の向き合い方を切実に考えさせる一作。先の見えない絶望に苦しむニコラスの憂いを帯びたまなざしに、胸を締め付けられた。

監督／フロリアン・ゼレール
製作／英国・フランス、２時間３分

2023年3月17日公開　｜　2023年3月17日神奈川新聞掲載

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