気になる 網走で戦後初の女性市議、中川イセの激動半生描く 横浜で26日に語り劇
- 横浜人形の家・あかいくつ劇場(横浜市中区)

北海道網走市で戦後初の女性市議になった故・中川イセ(1901~2007年)の半生を描いた語り劇「零(zero)に立つ」が26日、横浜人形の家・あかいくつ劇場(横浜市中区)で上演される。苦難に直面しながら自らの人生を切り開いたその生きざまを伝えようと、劇作家のかめおかゆみこ=同市青葉区=が脚本を手がけた。
副題は「激動の一世紀を生きた中川イセの物語」。山形県干布村(現・天童市)に生まれたイセは幼くして実母と死別し、里子に出された。差別や貧困に苦しみつつ、10代で未婚の母となり、北海道へ。長女の養育費を稼ぐため、18歳で網走の遊郭に入った。
牧場経営者の息子と結婚後、1947年に同市初の女性市議となった。7期28年務め、上水道敷設などに尽力。気さくで面倒見のいい人柄から「ばっちゃん」と慕われたという。

波瀾(はらん)万丈の半生を劇にしようと企画した山形県在住の俳優、夢実子(ゆみこ)に協力を依頼され、かめおかが脚本を担当。2014年9月に夢実子が横浜で上演した舞台を見たことが執筆を後押ししたという。「イセさんを主人公にした小説を夢実子さんが朗読したのですが、イセさんの真っすぐな生き方と、それが読み上げられた時の迫力に心を揺さぶられました」
舞台化を目指した2人は網走に赴き、イセと親交のあった元市議や親族に逸話や思い出を聞いて回った。「偉ぶることがない、人間の大きい人」「どんな人も家に招き入れて話を聞いてあげていた」など、エピソードは尽きなかった。
取材などを基に脚本をまとめた「零(zero)に立つ」は15年夏、朗読に動きを取り入れた語り劇の形式で、同市で初演を果たした。今回の横浜公演は首都圏で初めての上演となる。

夢実子が1人で舞台に立ち、イセや語り手など複数の役を演じ分ける。「見せ場はたくさんありますが、女性が虐げられる現実を前に『悲しい思いをする女は絶対につくらない』と誓うシーンがある。イセさんの心の内が浮かび上がる名場面です」とかめおか。
「誰かのためになるなら自分の体を張れる信念の人だった。苦労に苦労を重ねたけど、絶えず前を向く姿に今を生きる私たちも勇気をもらえます」
新型コロナウイルスの感染拡大で社会の閉塞(へいそく)感や女性たちの生きづらさが浮き彫りになったからこそ、より多くの人にイセを知ってもらいたいという。「イセさんは女性をはじめ、社会的弱者と呼ばれる人たちの人権擁護にも力を尽くした。人にはこれだけのエネルギーがあると、お芝居を通して伝えたいです」
午後1時、4時半開演の2回公演。一般4千円ほか。後日、動画でも配信する(3千円ほか)。問い合わせは公演事務局、電話045(884)0634。
2023年3月20日公開 | 2023年3月17日神奈川新聞掲載
オススメ記事⇩
この記事に関連するタグ
シェア、または新聞を購入する
- LINE
- URLコピー
- 掲載日付の
新聞を買う
推しまとめ
かながわの地域ニュースなら
「カナロコ」

「神奈川」の事件・事故、話題、高校野球をはじめとするスポーツなど幅広いローカルニュースを読むなら、地元新聞が運営するニュースサイト「カナロコ」がおすすめ。電子新聞が読めたり、便利なメルマガが届く有料会員もあります!