気になる 元日本兵の帰国に尽力、「奇跡の歌姫」描く 「横浜夢座」がドラマリーディング
- 山手ゲーテ座ホール(横浜市中区)

俳優・五大路子が主宰する劇団「横浜夢座」は4月1日、横浜生まれで戦前・戦後を通じて活躍した歌手、渡辺はま子の物語をドラマリーディング「奇跡の歌姫─渡辺はま子」として山手ゲーテ座ホール(横浜市中区)で上演する。フィリピンの刑務所にBC級戦犯として収容されていた100人余りの元日本兵と、彼らの帰国に尽力した渡辺の姿を描く。
渡辺の代表曲の一つが1952年発売の「あゝモンテンルパの夜は更けて」。マニラ郊外のニュービリビット刑務所に死刑囚として収監されていた元日本兵の代田銀太郎が作詞、伊藤正康が作曲した。モンテンルパとは刑務所があった丘の名で、51年1月には日本人14人が処刑されていた。
望郷の念を歌った同曲は大ヒット。渡辺や、教誨師(きょうかいし)として死刑に立ち会い、任期後も現地にとどまった加賀尾秀忍(しゅうにん)が、世間から忘れられていた彼らの釈放を訴えて奔走し、53年7月、17人の遺骨と共に108人が帰国を果たした。
五大がこうしたいきさつを知ったのは、99年12月31日に渡辺の訃報に接してから。「はま子さんは戦時中、戦意高揚を歌い、喝采を受けた。戦地に向かう人の背中を押したことに対し、自分なりに責任を取ろうとしていたのかもしれない」と五大。
五大自身も元日本兵らを訪ねたり、手紙のやりとりをしたりと交流を続け、2001年には作家の山崎洋子が脚本を担当して舞台化した。
3月初めには、加賀尾が住職を務めた岡山県笠岡市の宝蔵院に墓参した。処刑された人々の名が刻まれた鐘を突いた時には、自然と同曲を口ずさんだ。「一生を通して回向し続けた加賀尾先生の思いが伝わってきた」と感慨を深くした。
特に若い世代に舞台を見てほしいという。「過去のことを語り継ぐのではなく、もしかしたらこれからやって来ることへの警告になるのかも、と感じ始めている」と来場を呼びかけた。
1日2回公演で、午後1時と同5時開演。公演後にアフタートークあり。全席自由で前売り3千円。問い合わせは横浜夢座、電話070(4323)0273。
2023年3月22日公開 | 2023年3月20日神奈川新聞掲載
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