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映画「せかいのおきく」で父・佐藤浩市と共演 寛一郎「いいシーンになった」

「『鎌倉殿の13人』はセットでの撮影でしたが、神奈川は東京ほど荒々しくなくて、鎌倉や葉山辺りにいつか住みたいです」と話す寛一郎(撮影・立石祐志)
「『鎌倉殿の13人』はセットでの撮影でしたが、神奈川は東京ほど荒々しくなくて、鎌倉や葉山辺りにいつか住みたいです」と話す寛一郎(撮影・立石祐志)

 江戸で暮らす没落した武士の娘と、ふん尿処理に携わる下肥(しもごえ)買いの青年。貧しい中でも懸命に生きる若者たちの青春を温かく描いた時代劇「せかいのおきく」(阪本順治監督)が、TOHOシネマズ上大岡などで上映中だ。下肥買いの中次(ちゅうじ)を演じた寛一郎(26)は「時代劇であっても、今を生きる人に違和感なく通じるものがある」と話す。

 寺子屋で子どもたちに読み書きを教え、元勘定方の父・源兵衛(佐藤浩市)と長屋で暮らすおきく(黒木華)。その長屋へふん尿を集めに来る下肥買いの矢亮(やすけ)(池松壮亮)。古紙を買い取って問屋に売る「紙くず買い」から転身し、矢亮の相方になった中次。おきくは、ある事件に巻き込まれて喉を切られ、声が出せなくなってしまう。心を閉ざしたおきくに不器用な中次は温かく接し、2人は恋心を育んでいく。

 理不尽な目に遭うなど苦しい中でも、ユーモアや自尊心を忘れずに生きていく若者たちを通して、人が人を思いやる温かさやつながりが情感豊かなモノクロ画面で描かれる。

 寛一郎は「現代からすると明らかに苦労する生活ではあるが、心情的には豊かな部分があった」と話す。「伝えたい事は現代劇でも、時代劇でも変わらない。今を生きる僕らに通じるものがある」と、内面的な人物表現を心掛けたという。

 物語は、序章から終章まで短い章をつなげて進む。各章の終わりが短い間、カラー映像になるのは「現代とつながり、違う世界じゃないんだとふに落ちる部分」でもあったという。

 作品テーマの一つに掲げられたのが、プロデューサーの原田満生が着目した「サーキュラー・バイオエコノミー(循環型共生経済)」だ。

 下肥買いは最下層の職業としてさげすまれた。しかし、長雨が続くと長屋のトイレがあふれるなど、江戸の生活に必要不可欠な存在だった。買い取ったふん尿は農家に肥料として売られた。農家が育てた野菜を人々が食べ、またふん尿となる循環型社会が江戸時代には成立していた。

 「人にも、その世代の人間が果たす役割があり、それが次の世代に受け継がれていく。人も環境も全部のものが回っていくんだと訴えている作品」だという。

 その意識は美術にも取り入れられ、撮影用のふん尿は廃棄物を再利用して作られた。「最初は新聞紙や段ボールを使っていたが、廃棄食品を発酵させるなど、撮影が進むにつれてグレードアップ。臭いは本当に強かったです」


「せかいのおきく」での親子共演場面
「せかいのおきく」での親子共演場面

 ロッテルダム国際映画祭に出品された際、「日本の文化が強いので海外の人にどう伝わるだろうか、と思っていたところ、『恋をしている目だ』と言われました。やってよかったなと思いました」と笑顔を見せる。

 父である佐藤とは、長屋のトイレで踏ん張る源兵衛と、くみ取りしようと待つ中次という2人だけの場面があった。「せかいって言葉、知ってるか」と問う源兵衛は、「ほれた女ができたら、せかいで一番好きだって言ってやんな」と中次に助言する。

 終盤で中次がおきくへのあふれる思いを示すジェスチャーとつながる場面になったといい、「すごく好きだし、いいシーンになりました」と振り返る。

 昨年はNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で、源実朝を暗殺する公暁を演じた。「もうちょっと自分本位で演技してもいいんだな、がんばろう、と思えた作品だった」という。

 祖父の三国連太郎から続く俳優一家として、寄せられる期待は大きい。「たまに重くなることはあるが、期待されることはありがたいし、応えたくなります」

2023年5月2日公開 | 2023年5月1日神奈川新聞掲載

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