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「横浜能」、6月に70回目の公演 人間国宝・大坪喜美雄に聞く見どころ
- 横浜能楽堂(横浜市西区)

横浜市内の能楽愛好者団体である横浜能楽連盟が主体となり、1953年から約70年にわたって開催されてきた「横浜能」。6月18日に横浜能楽堂(同市西区)で70回の節目となる公演が開かれる。横浜にゆかりのある五流の能楽師が10年ぶりに一堂に会し、能や狂言、連吟、舞囃子(ばやし)、一調、仕舞とさまざまな上演形式を披露する。能「花筐(はながたみ)」に出演するシテ方宝生流、大坪喜美雄(75)=横浜市港南区=に見どころを聞いた。
大坪が横浜能に初めて出演したのは、77年の「放下僧(ほうかそう)」。ただ、それ以前から雑用係として呼んでもらっていたという。96年に横浜能楽堂が完成するまでは、県立音楽堂や県立青少年センター、関内ホールなどで仮設の能舞台を作って行われていた。「世話役は大変だったと思います。当時は愛好者の熱気がすごかった」と振り返る。
今回上演する「花筐」は「狂女物」と呼ばれる演目で、継体天皇と、かつての恋人・照日(てるひ)の前の伝説を題材にしている。天皇となって都へ去った恋人に贈られた花筐(花かご)と手紙を抱き、後を追って越前国を出た照日の前。紅葉狩りに出かけた天皇の一行と巡り合うが、恋しさのあまり狂女となった姿に誰も気付かない。従者に花かごと手紙を打ち落とされた照日の前は、天皇の前で舞い狂う。
宝生流では「山姥(やまんば)」「歌占(うたうら)」と並び、「三クセ」と呼ぶ難曲。「謡も舞も特殊で難しいが、逆にいえばそれだけ面白い曲。狂い舞う場面には、舞の面白さがある」といい、この後(のち)シテの舞が見どころだ。
継体天皇は、孫で小学6年生の子方・大坪海音(かいと)が舞う。「大人が舞うと生々しくなり過ぎるためではないか」。共演には「親子だと厳しさもあるかもしれませんが」と目を細める。

昨年7月、国の重要無形文化財保持者(人間国宝)の認定を受けた。「今までと同じではいけないな、と重荷を背負った気持ち。一つの流派で認定されるのが1人なので、自分でいいのか、と申し訳なさもある」と明かす。
10代の頃は壁にぶつかって悩み、厳しい稽古もあって、何度もやめようと思ったという。「満足してはいけないが、一つの舞台が無事に終わると、出来不出来はともかく、ほっとし、達成感がある。その繰り返しでこれまでやってきた。もっとも、最近は後悔ばかり」と苦笑する。
今、能を楽しむ客席には若い世代が増えているという。「古語の謡は難しいかもしれないが、ある程度のあらすじを知っていれば楽しめるのではないか。海外のオペラやミュージカルを見るのと同じです」
横浜能:他の演目は、連吟「高砂」(喜多流)、舞囃子「胡蝶(こちょう)」(金春流)、一調「女郎花(おみなめし)」(金剛流)、仕舞「小袖曽我」(観世流)、狂言「福の神」(和泉流)。午後2時開演。S席7千円ほか。問い合わせは横浜能楽堂、電話045(263)3055。
2023年5月21日公開 | 2023年5月19日神奈川新聞掲載
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