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映画「怪物」 渦巻く悪意と偏見、「怪物だーれだ」


 2日から横浜ブルク13などで上映。

 人間への温かい視線が根底にあった是枝裕和監督の前作「ベイビー・ブローカー」と打って変わり、人間の悪意や偏見にぞっとさせられる作品だ。

 大きな湖のある町で、小学5年生の息子・湊(黒川想矢=写真左)と暮らすシングルマザーの早織(安藤サクラ=同右)。湊がスニーカーをなくしたり、水筒から泥水が出てきたりし、学校でのいじめを疑う。精神的に不安定な湊を問い詰めると、担任の保利(ほり)(永山瑛太)に虐待されたという。だが、保利は、湊がクラスメートの依里(より)(柊木陽太)をいじめているという─。

 早織、保利、子どもたち、と視点が変わるたびに、同じ出来事が全く別の意味合いを帯びる。黒沢明の「羅生門」を思わせる構造だ。

 子どもたちが度々口にする「脳みそを豚の脳と入れ替えられたら、人間じゃないの?」という質問や、「結婚して普通の幸せを」「男らしく」「僕はかわいそうじゃないよ」─。印象的な言葉が浮かび上がり、自分と異なる他者を否定し、無意識に排除しようとする「怪物」が次第に姿を現す。

 脚本を手がけたのは、映画「花束みたいな恋をした」の坂元裕二。是枝が自身の脚本ではない作品を撮るのは、デビュー作以来だという。「自分には書けない人物がいる」と監督が語る坂元の脚本には、癖のある人物がうようよしている。見事、カンヌ国際映画祭で脚本賞に輝いた。

監督/是枝裕和
製作/日本、2時間6分

2023年6月1日公開 | 2023年6月2日神奈川新聞掲載

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