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気になる 回顧展
鎌倉でこだわりのアトリエ 横須賀美術館で朝井閑右衛門の回顧展

  • 横須賀美術館(横須賀市)

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朝井閑右衛門「祭Ⅰ―お狐」(1977年、油彩・キャンバス〈板貼〉、県立近代美術館蔵)
朝井閑右衛門「祭Ⅰ―お狐」(1977年、油彩・キャンバス〈板貼〉、県立近代美術館蔵)

 戦後中国から引き揚げ、約20年間横須賀市田浦町に暮らした洋画家・朝井閑右衛門(かんえもん、1901~83年)。医師のすすめもあって、66年には豊かな画業の実りをもたらした横須賀から、鎌倉市の由比ガ浜へと居を移す。

 常に自分の制作場所に強い思い入れをもっていた朝井は、手に入れたアトリエの一部は自ら設計。庭の植栽も考え、80年ごろまで手を入れ続けた。内部は、作品を描くための居心地よいスペースであることはもちろん、朝井が収集した骨董(こっとう)や人形、さまざまな布もあちこちに配置された。茶室もしつらえ、友人たちを招き、手に入れた器で茶をたてた。集めた品々は単に飾っておくだけでなく、生活で実際に使い、作品にも描いている。まるでアトリエそのものが自身の作品世界であるかのような独特の空間だった。

 海の近くに引っ越したことが、朝井の心を晴れやかにしたのだろうか。由比ガ浜のアトリエから生み出された作品群は色鮮やかで華やかである。また、横須賀時代とは異なるさまざまな物語の登場人物、風景を主役にしている。

 この頃の作品は絵の具の厚塗りが特徴的である。ごてっとした絵の具そのものの存在感が強く、具象的に表現しているようで、近くから見るとまるで抽象のようにも感じられる。

 本作は3部作の内の1点で、どれも鎌倉の鶴岡八幡宮の境内を題材にしている。手前に象徴的な鳥居が描かれ、たくさんの人々が集い、みこしをかつぎ、流鏑馬(やぶさめ)らしき馬も見える。一見にぎやかな祭礼の様子のように思われるが、空想上の人物も浮遊し、現実を描いているわけではない。身の回りにある出来事が、朝井の想像力を大いに刺激して、ここにしかない風景画が創り出されたのである。

(横須賀美術館学芸員・工藤 香澄)

 「没後40年 朝井閑右衛門展」は18日まで、横須賀美術館(横須賀市鴨居)で開催中。一般1300円ほか。5日は休館。問い合わせは同館、電話046(845)1211。

2023年6月5日神奈川新聞掲載

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