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横須賀で築き上げた絵画世界 横須賀美術館で朝井閑右衛門の回顧展

  • 横須賀美術館(横須賀市)

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朝井閑右衛門「電線風景(トンネル)」(1952年ごろ、横須賀美術館蔵)
朝井閑右衛門「電線風景(トンネル)」(1952年ごろ、横須賀美術館蔵)

 小田原で友人たちに囲まれながら、画家として歩み始めた朝井閑右衛門(かんえもん、1901~83年)。今回は朝井にとって最も縁が深い「横須賀」とその象徴的な作品である「電線風景」を取り上げたい。

 友人や絵描き仲間から刺激を受けながら腕を磨いていた朝井は、1936年の文展鑑査展に大作「丘の上」を出品。文部大臣賞を受賞して一躍画壇の寵児(ちょうじ)となった。しかし時代は太平洋戦争へと向かっており、朝井もその巨大な歴史の渦に巻き込まれてゆく。「実力派中堅作家」として認められた朝井は、軍などからの委嘱により中国へ赴き、戦争画を描くようになる。しかしこうした生活を過ごすうちに、朝井は次第に上海や蘇州などの風景に心ひかれ、仕事とは切り離して日本と中国を往来するようになる。終戦を迎えた場所も上海であった。

 日本に引き揚げてきた朝井が新たに居を定め、戦後の再出発を決めた場所が横須賀の田浦であった。これまでさまざまな土地を転々としてきたが、以後20年間ここに暮らし、充実した「横須賀時代」が始まる。

 朝井が暮らした田浦のアトリエからは、JRと京急線の架線が直角に交差している様子が見えた。この眺めを「電線風景」と題し、実際とはまるで異なる風景画として、まるで生き物のように太い電線を画面の主役に据えた。そしてバリエーションを展開させ、電線にこだわって繰り返しこのシリーズを描いた。また以前の画風から大きく変化して、重厚な色彩と絵の具の厚塗りが朝井の代名詞となる。

 戦後の横須賀は、米軍基地やドブ板通りなど独特の風俗や文化にあふれていた。しかし朝井はあまりこうした風景画を残していない。電線やアトリエにあるガラス台鉢など、身の回りの気に入ったモチーフに執着し、自分だけの絵画世界を創造していった。

(横須賀美術館学芸員・工藤 香澄)

 「没後40年 朝井閑右衛門展」は18日まで、横須賀美術館(横須賀市鴨居)で開催中。一般1300円ほか。問い合わせは同館、電話046(845)1211。

2023年5月29日神奈川新聞掲載

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