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絵画
フランスの画家アンリ・マチスの大規模回顧展 東京都美術館でマチスの生涯と創作の軌跡
- 東京都美術館(東京都台東区)

20世紀を代表するフランスの画家アンリ・マチス(1869~1954年)の20年ぶりとなる大規模な回顧展が、東京都美術館で開かれている。世界でも有数のマチスコレクションを持つパリのポンピドゥー・センターの所蔵作品を中心に、絵画や切り絵、本の表紙、彫刻といった作品群からマチスの生涯と創作の軌跡をたどることができる。
会場には青年時代の挑戦的な作品から晩年の大作まで、年代に沿って約150点が展示されている。
見どころの一つが「赤の大きな室内」(1948年)。壁や床、テーブルが赤く塗られた室内にはマチスの作品とおぼしき絵がかかり、卓上の花瓶やレモンは二つずつで1対の組み合わせになっている。鮮やかな色彩と軽快な画面がマチスらしいこの作品は、79歳の時に手がけたもの。生涯最後の油絵で、1枚の絵の中に美しい調和が生まれている。
多くの人がイメージするマチスの絵画世界とは異なる作品もある。


日本初公開の「豪奢(ごうしゃ)、静寂、逸楽」(04年)は、理想郷のような風景に複数の人物が点在するが、その画面はマチスには珍しい点描技法で描かれている。この年の夏、マチスを南仏に招いた新印象派の中心人物、ポール・シニャックの影響を受けたものだという。
「コリウールのフランス窓」(14年)は、転換期の一作。キャンバスの中央が真っ黒に塗られた、抽象画にも見える未完の作品だ。第1次世界大戦が勃発した年に描かれ、窓は開いているのか、閉じているのか分からない。「窓」は「視覚」の隠喩でもあり、当時の社会状況を表現したようにも見える。


絵画のほか、日本でも人気の高い弾むような切り絵や、本の表紙作品なども並ぶ。自身が創作の集大成と位置づけた南仏・バンスのロザリオ礼拝堂の写真や資料もそろい、初期から晩年までの、彼の創作世界を一覧できる。
「マティス展」は8月20日まで。一般2200円ほか。月曜と7月18日休館(17日、8月14日は開館)。問い合わせはハローダイヤル、電話050(5541)8600。
2023年6月26日公開 | 2023年6月25日神奈川新聞掲載
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