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「鎌倉のアトリエからの贈り物」 都内で美術家・宮崎進の展覧会

存在感を放つ「頭部」(手前)=M.G.P
存在感を放つ「頭部」(手前)=M.G.P

 シベリアでの抑留体験を原点に、人間の命に向き合った美術家・宮崎進(しん)(1922~2018年)。鎌倉のアトリエに残された、膨大な絵画や彫刻の一部を紹介する展覧会「宮崎進の仕事─遺されたモノたち」が、宮崎を記念する美術館として開館した「M.G.P」(東京都新宿区)で開かれている。かつての居宅跡に建てられた同館には、未発表作品を中心に、1950~60年代に手がけた絵画や彫刻約70点が並ぶ。

 宮崎が96歳で死去してから、遺族や教え子らがアトリエの作品を整理してきた。パーキンソン病を患った晩年の宮崎に寄り添った遺族の宮崎とみゑ(75)によると、本人も亡くなる前に何度か訪れ、「いいのができた」と喜んでいたという。

 51年に故郷の山口県徳山町(現・周南市)から上京した宮崎は、雑誌のカットなどを描いて生計を立てた。美術館の名称は、当時立ち上げたデザイン会社「Miya Graphic Productions」の頭文字から取ったという。もともとは鎌倉のアトリエを「さまざまな人たちの作品を発表する場として使ってほしい」と願っていたため、今後はこの場所を活用する可能性もある。

 1階に並ぶのは、敗戦と抑留体験から、人間の生命力の強さを見つめ直した作品だ。代名詞といえる目の粗い麻袋(ドンゴロス)を何枚も重ねてコラージュしたミクストメディアや、床に置かれた巨大な彫刻「頭部」が、圧倒的な存在感を示す。


未発表作品を中心に、さまざまなモチーフを描いた絵画が並ぶ=M.G.P
未発表作品を中心に、さまざまなモチーフを描いた絵画が並ぶ=M.G.P

 宮崎は20歳で日本美術学校を繰り上げ卒業して出征。敗戦後の49年までシベリアに抑留された。“シベリア帰り”として警察官に目を付けられ、外出先を問われることもあった。とみゑは「『戦争から帰って来てもこんな目に遭うとは、不条理だと思った』とよく話していた」と振り返った。

 地下1階には、裸婦像や風景、静物など、さまざまなモチーフを描いた絵画を展示している。50~60年代には取材に基づく写実的な作品に取り組んでいた宮崎。仕事を終えた週末など、少しでも時間ができると夜行列車に飛び乗り、絵の題材を求めて東北や北陸へ出かけていたという。その時期に描いたと思われる風景画には、画家の真っすぐなまなざしが感じられる。

 とみゑは、多様な作品を前に「鎌倉のアトリエからの贈り物という感じ。見ていて飽きない。知られざる作品を通して、宮崎の仕事を広く知ってほしい」と話した。

 15日まで。木、金、土曜のみ開館。一般500円、18歳以下は無料。東京メトロ東西線「神楽坂駅」徒歩3分。問い合わせはメール( mgp.yarai@gmail.com)で。

2023年7月4日公開 | 2023年7月3日神奈川新聞掲載

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